KENWOOD D-3300T (18号機) が到着
2026年1月17日、福岡市早良区の H さんより
KENWOOD D-3300T
の修理依頼品が到着しました。
定価14万円
の高級 FM 専用チューナです。
程度&動作チェック
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修理依頼者のコメント
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先日オークションにて整備済という本機を入手しました。
整備済の内容は以下です。
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メモリー表示の 8ch ランプが点灯しませんが、メモリー動作には問題はありません。
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音質向上のため、オーディオ出力系のオペアンプ [NJM4560D] を高音質で低歪率の [LM4562NA] に交換しました。
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オーディオ信号のカップリングコンデンサーをHi-Fi品に交換しました。
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アンテナ端子の旧型F接栓を新型ネジ式に変更しました。
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メモリー保持用の電気二重層コンデンサーを交換しました。(0.018F→1.0F)
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[タクトスイッチ] [トリマーコンデンサー] を全数交換しました。
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半田クラックを補修しました。
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アンテナ A/B 切り替えスイッチ接点修復しました。
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全体調整をお願いします。
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外観のチェック
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製造シリアル番号は [69K11048] で、電源コードの製造マーキングより [1986年製造品] とわかりました。
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非常に綺麗な逸品で指摘する問題はないです。
サイドウッドも綺麗です。
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アンテナ端子を F 端子に交換されていますが、ネジ部分が浅いタイプです。
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ネジ込み型プラグで使うなら特に問題ないです。
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ワンタッチプラグで使うには無理があるので、この場合は右の写真のような変換コネクタを使うとよいです。
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リアパネルの RCA 端子は状態が良くピカピカです。
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電源 ON してチェック
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電源は入り FL 表示器は正常に表示します。
ボタンやノブ、LED は正しく反応します。
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S メータがフルに振れ [STEREO] 表示が出て綺麗な音が出ます。
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プリセットメモリ [M8] に問題なくプリセット/コールできますが、FL 表示器に [M8] を示す赤の▼マークが出ません。
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[REC CAL] ボタンで正常にテスト音が出ます。
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カバーを開けてチェック
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前回のメンテナンス者の作業状態は良好で筆者のほうで手直しの必要はなさそうです。
とこの時は思っていました。
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筐体内部と基板は綺麗で、OP アンプや電解コンデンサなどが交換されています。
リペア (その1):FL 表示器にプリセット [M8] を示す赤の▼マークが出ない
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調査と原因
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[M8] は以下の信号の流れで点灯します。
[IC2]-19pin → 1pin-[IC5]-18pin → 38pin-FL1-M8
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IC2 は [チューナ基板] にある MCU (マイクロコンピュータ) です。
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IC5, FL1 は [フロントパネル基板] にあって、IC5 はドライバ IC、FL1 は FL 表示器そのものです。
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下は FL 表示器の配線図です。
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赤□で囲んだ 38pin 電圧を観測すると ON/OFF = +14V/0V と変わりますが、[M8] 表示が出ません。
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FL 表示器そのものの故障確定です。
これが原因です。

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修理不可
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本機の FL 表示器は KENWOOD 専用品で一般には販売されていません。
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製造から39年経っているので、もう KENWOOD にも在庫はないと思います。
よって、修理不可です。
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コメント
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[M8] 表示が出ないだけで実際のプリセット/コールはできるので、このままご使用ください。
リペア (その2):電源回路の出力電圧が低い
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概要
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特に問題なく動作したので再調整に入りました。
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一番最初に電源回路の出力電圧のチェックをしますが、
ここで問題発生!
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実測値は以下ですが、赤文字の電圧が標準値より 20% 程度低いのです。
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±10% 以内であれば合格ですが、-20% 程度では支障が出ます。
| VP |
標準電圧 |
実測電圧 |
判定 |
備考 |
| J35 (Q26-E) |
+15V |
+12.2V |
× |
アナログ系 |
| J40 (Q27-E) |
-15V |
-12.2V |
△ |
| J38 (IC11-OUT) |
+5.6V |
+5.61V |
〇 |
デジタル系 |
| J31 (Q28-E) |
+18V |
+15.0V |
△ |
FL |
| J27 (Q32-E) |
+32V |
+26.5V |
× |
VT 電源 |
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[+15V] はフロントエンドや IF 部で使っているので +12.2V だと感度が落ちている心配があるので、判定は×です。
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[-15V] は OP アンプで使っており、-12.2V あれば動作はするので、判定は△です。
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[+18V] は FL 表示器で使っており、+15.0V でも動作しますが、輝度が落ちるので、判定は△です。
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[+32V] はバリキャップ同調電圧 VT の元電源です。
調整では VT の最高電圧を +25V に設定するので、+26.5V ではマージンが無さ過ぎなので、判定は×です。
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調査と原因
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下の回路図は電源回路の一部です。
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[+15V] [-15V] [+18V] [+32V] は同期電源構成となっており、[+15V] でそれ以外の電圧も作成します。
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すなわち、[+15V] の電圧が 20% 低いと他の電圧も同期して 20% 低いとなる訳です。
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[+15V] の電圧は [IC12] M5230L レギュレータで作成します。
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[REF DC VOLT] の電圧を測定したいのですが、その測定端子がありません。
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回路図の赤□で囲んだ 5pin の電圧を測定すると 1.4V でした。
この電圧は [REF DC VOLT] と同じ電圧のはずです。
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M5230L のデータシート
を見ると [REF DC VOLT] = VREF = 1.8V となっており、測定された 1.4V は異常です。
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原因は [IC12] M5230L の劣化故障です。
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[REF DC VOLT] が 1.4V ということは標準値 1.8V の -22% です。
このため、[+15V] の電圧が 20% 低いのです。

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修理
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M5230L は既に廃品種になっており、生産されていません。
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一部の半導体商社に在庫があったので取り寄せて交換しました。
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修理後の動作チェック
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別項の「再調整」に記載した各電圧のように、全ての電圧が正常になったなことを確認しました。
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FL 表示器の輝度がかなり上がり新品同様になりました。
ここにも電圧低下の影響が出ていました。
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コメント
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電源回路の故障は致命傷になることがあり、早急な修理が必要でした。
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今回は電圧が低いほうにズレたので助かったのですが、高いほうにズレたらあちこち故障したかもしれません。
再調整
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電圧チェック (VP)
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リペア後の各電圧の実測値は以下のように良好でした。
| VP |
標準電圧 |
実測電圧 |
判定 |
備考 |
| J35 (Q26-E) |
+15V |
+14.8V |
〇 |
アナログ系 |
| J40 (Q27-E) |
-15V |
-14.8V |
〇 |
| J38 (IC11-OUT) |
+5.6V |
+5.61V |
〇 |
デジタル系 |
| J31 (Q28-E) |
+18V |
+17.7V |
〇 |
FL |
| J27 (Q32-E) |
+32V |
+31.5V |
〇 |
VT 電源 |
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FM 受信部の調整
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再調整結果
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ステレオセパレーションや高調波歪率は以下のような超優秀値になって、音の解像度が上がりました。
| 項目 |
IF BAND |
stereo/mono |
L |
R |
単位 |
| ステレオセパレーション (1kHz) |
WIDE |
stereo |
70 |
70 |
dB |
| NARROW |
63 |
67 |
dB |
| 高調波歪率 (1kHz) |
WIDE |
mono |
0.0077 |
% |
| stereo |
0.014 |
% |
| NARROW |
mono |
0.045 |
% |
| stereo |
0.045 |
% |
| パイロット信号キャリアリーク |
WIDE |
stereo |
-78 |
-78 |
dB |
| オーディオ出力レベル偏差 (1kHz) |
WIDE |
mono |
0 |
+0.13 |
dB |
| REC CAL |
WIDE |
mono |
398 |
Hz |
| -6.3 |
dB |
使ってみました
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修理&再調整が終わって
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本機は既に前の修理者がメンテナンス済みで、かなりマトモに作業してありました。
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電源 IC 故障により修理して電圧が上がったことで影響が出る部分を含め全て再調整しました。
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前の修理者は作業がマトモだっただけに、電源回路故障に気付かなかったのが不思議です。
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デザイン
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フロントパネルが分厚いヘアラインアルミ材、チューニングツマミやボタンもアルミ材、天板は分厚い鉄板と、質感良好です。
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[MODULATION] 表示はピークホールド付きで見易く、見ていて面白いです。
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プリセットメモリは16局分あります。
これだけあれば、まず十分です。
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[QUIETING CONTROL] ボリュームは、通常、[NORMAL] 端で使うのが正解です。
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[DISTANCE] 端にするとモノラルになってしまうので注意です。
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ステレオ受信して雑音が多い場合に操作すると、ハイブレンドされて S/N が改善されます。
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[RF SELECTOR] は [DISTANCE] で使うのが正解です。
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[DISTANCE] のほうが S/N が上がります。
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[DIRECT] は放送局の真下とか電波が強過ぎる場合に選択します。
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[DIRECT] はフロントエンドの高周波増幅段をバイパスして感度を落として強過ぎる電波に対応するモードなのです。
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[DIRECT] にしたら音が良くなるということはありません。
この辺りを誤解している人が多いです。
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このケースの方はほぼいないと思うので、[DISTANCE] で使うのが正解なのです。
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感度と音質
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聴き惚れるほど素晴らしい音です。
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KENWOOD らしい、解像度の高いカチッとした硬派の音です。
音にキラキラ感があります。
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S/N が非常に良く暗黒の静寂の中から細かい音が良く出ています。
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高級機らしい非常に安定した
感度と妨害電波排除能力です。
定価14万円にふさわしい高性能・高音質マシンです。