KENWOOD D-3300T (8号機) が到着
2024年4月15日、埼玉県入間市の H さんより、
KENWOOD D-3300T
の修理依頼品が到着しました。
定価14万円
の高級 FM 専用チューナです。
程度&動作チェック
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修理依頼者のコメント
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受信感度が著しく低下しました。
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電源投入直後、DIRECT で S メータが1~2ドットしか振れません。
時間経過するとほぼ全ての受信局で0ドットになります。
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DISTANCE にすると問題なく受信します。
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外観
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製造シリアル番号は [6ZK10306] で、電源コードの製造マーキングより [1986年製造品] と判明しました。
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新品同様に超綺麗な逸品
です。
サイドウッドも綺麗な状態を保っています。
こういう中古もまだあるのですね。
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電源 ON してチェック
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RF SELECTOR:DIRECT モードでも修理依頼者の言う「受信感度が著しく低下」は確認できませんでした。
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ただ、普通にアンテナプラグを A 側簡易 F 端子に接続すると S メータが1~2の時がありました。
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この時、アンテナプラグを揺すったら S メータの振れが大きくなり正常になりました。
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A 側簡易 F 端子が劣化して接触不良気味になっているようです。
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このため、以下の [PAL (メス) / F (メス) 変換コネクタ] を介して、これ以降のチェックをしています。
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通常の簡易 F プラグはアンテナピンの内側と接触しますが、この変換コネクタを使うとアンテナピンの外側と接触するので、接触面積が大きくなって接触不良が回避できます。

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修理依頼者の言う「時間経過すると S メータがゼロになる」は確認できませんでした。
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むしろ時間経過と共に S メータの振れが大きくなります。
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ただし、RF SELECTOR:DIRECT モードの時に以下の不具合は確認できました。
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ANTENNA:A では S メータの振れが6ドットで、B では7ドット (フル) でした。
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[ANTENNA] スイッチで接触不良による感度低下がありそうです。
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軽く現状の性能値を測定してみました。
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実用範囲の性能を保持していましたが、ステレオセパレーションはこの機種にしては低いです。
| 項目 |
IF BAND |
stereo/mono |
L |
R |
単位 |
| ステレオセパレーション (1kHz) |
WIDE |
stereo |
37 |
39 |
dB |
| 高調波歪率 (1kHz) |
WIDE |
mono |
0.026 |
% |
| stereo |
0.026 |
% |
| パイロット信号キャリアリーク |
WIDE |
stereo |
-63 |
-63 |
dB |
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カバーを開けてチェック
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内部は綺麗で、目視では劣化とわかる部品は無いように見えます。
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[CN4] に差し込まれているフラットケーブルが浮いて外れそうになっています。
(左の写真)
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プリセットメモリバックアップ用の電気二重層コンデンサはかなり古いタイプで、交換したほうがよいです。
(右の写真)

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FM フロントエンドにある複数のトリマコンデンサを回してチェックしてみましたが、特に問題ないです。
リペア (その1):[ANTENNA] スイッチと [A 側簡易 F 端子] が故障している
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スイッチを交換できればよいのですが、同じものは入手不可
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このスイッチは D-3300T のウィークポイントで、ここにメカニカルスイッチを使ったのは KENWOOD の設計ミスと思います。
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ここには従来の TRIO バリコン式チューナと同じくリードリレーを使うべきだったのです。
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コストダウン目的でメカニカルスイッチにしたことが、後に禍根を残す結果になったのです。
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メカニカル接点は常に空気に触れており必ずサビます。
そしていつか接触不良という重大問題化するのです。
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メカニカル接点を使うのであれば数 10mA の電流を流す使い方が正しいです。
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電流を ON/OFF する際のスパークで接点が洗浄されるのです。
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アンテナ切り換えでは全く言ってよいほど電流は流れません。
接点がサビるいっぽうです。
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修理依頼者のこの状況を伝え、[ANTENNA] スイッチでの A/B 切り換えは諦め、FM フロントエンドと F 端子を直結することにしました。
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改造
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どうせ改造するので、オリジナリティに拘る必要はないです。
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D-3300T の [簡易 F 端子] を [本格的な F 端子] に交換しました。
(右の写真)
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簡易 F プラグがシッカリ挿入できるよう、少し長めタイプを使いました。
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メンテンス性も考えてリアパネル側から締め付けるタイプにしています。
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[ANTENNA] スイッチの切り離しと、新たな F 端子とフロントエンドを直結
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以下のように、2箇所パターンカット (×のところ) しました。
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同軸線で新しい F 端子とフロントエンドを直結しました。

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改造後に動作チェック
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DIRECT モードでも S メータがフルになりました。
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スイッチ接点にかなりの接触不良があったようです。
スイッチがアッテネータのごとく動作していた。
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フロントパネル上に [ANTENNA] スイッチは残っていますが、単なる飾りです。
癒しスイッチです。
機能しません。
リペア (その2):電気二重層コンデンサはそろそろ寿命
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概要
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D-3300T においては AC プラグを抜いても電気二重層コンデンサで一定時間プリセットメモリの記憶をバックアップします。
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もう製造から40年近く経過しているので、そろそろ電気二重層コンデンサも寿命です。
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修理
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左の写真で橙色の部品が電気二重層コンデンサです。
古いタイプなので大きいですが容量は 18mF しかありません。
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右の写真は交換後です。
小さくなったのに、容量は 1F もあります。

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18mF→1F と50倍以上になったので、従来より長時間バックアップできます。
おそらく数ヶ月か?
リペア (その3):ハンダクラック予防補修
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ハンダクラックしやすい箇所
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左の写真で赤〇で囲んだ箇所は、リアパネルにある RCA 端子のリードと基板のハンダ付け部です。
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ここはリアパネルと基板の2方向から常にストレスがかかるのでハンダクラックしやすいです。
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右の写真は銅製放熱器に取り付けられた [パワートランジスタ] [電源 IC] です。
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ここは銅製放熱器と基板の2方向から常にストレスがかかるのでハンダクラックしやすいです。

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予防補修
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まだハンダクラックには至ってはいませんでしたが、ハンダクラック気味になっていました。
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劣化している古いハンダを吸い取り、新しく補修ハンダ付けしました。
リペア (その4):その他
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[CN4] コネクタに差し込むフラットケーブルが浮いている
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フロントパネル内部の清掃
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[ANTENNA] スイッチ切り離し改造時にフロントパネルを分解したので、同時にフロントパネル内部を清掃しました。
再調整
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電圧チェック (VP)
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実測値は以下のように良好でした。
| VP |
標準電圧 |
実測電圧 |
判定 |
| J35 (Q26-E) |
+15V |
+14.7V |
〇 |
| J38 (IC11-OUT) |
+5.6V |
+5.63V |
〇 |
| J40 (Q27-E) |
-15V |
-14.7V |
〇 |
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FM 受信部の調整
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再調整結果
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大きな調整ズレはありませんでしたが、それでも再調整でステレオセパレーションと高調波歪率が以下のように超優秀になりました。
| 項目 |
IF BAND |
stereo/mono |
L |
R |
単位 |
| ステレオセパレーション (1kHz) |
WIDE |
stereo |
70 |
70 |
dB |
| NARROW |
57 |
65 |
dB |
| 高調波歪率 (1kHz) |
WIDE |
mono |
0.011 |
% |
| stereo |
0.014 |
% |
| NARROW |
mono |
0.026 |
% |
| stereo |
0.027 |
% |
| パイロット信号キャリアリーク |
WIDE |
stereo |
-68 |
-72 |
dB |
| オーディオ出力レベル偏差 (1kHz) |
WIDE |
mono |
0 |
-0.03 |
dB |
| REC CAL |
WIDE |
mono |
398.4 |
Hz |
| -5.9 |
dB |
使ってみました
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デザイン
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フロントパネルが分厚いヘアラインアルミ材、チューニングツマミやボタンもアルミ材、天板は分厚い鉄板と、質感良好です。
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サイドウッドが高級感を醸し出します。
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[MODULATION] 表示はピークホールド付きで見易く、見ていて面白いです。
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プリセットメモリは16局分あります。
これだけあれば、まず十分です。
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[QUIETING CONTROL] ボリュームがあります。
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通常は [NORMAL] 端で使います。
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[DISTANCE] 端にするとモノラルになってしまうので注意です。
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ステレオ受信して雑音が多い場合に操作すると、ハイブレンドされて S/N が改善されます。
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[RF SELECTOR] は [DISTANCE] で使うのが正解です。
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[DISTANCE] のほうが S/N が上がります。
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[DIRECT] は放送局の真下とか電波が強過ぎる場合に選択します。
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このケースの方はほぼいないと思うので、[DISTANCE] で使うのが正解なのです。
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感度と音質
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聴き惚れるほど素晴らしい音です。
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KENWOOD らしい、解像度の高いカチッとした硬派の音です。
音にキラキラ感があります。
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S/N が非常に良く暗黒の静寂の中から細かい音が良く出ています。
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高級機らしい非常に安定した
感度と妨害電波排除能力です。
定価14万円にふさわしい高性能・高音質マシンです。