Pioneer F-120 (7号機) が到着
2026年4月5日、東京都北区の W さんより
Pioneer F-120
の修理依頼品が到着しました。
パルスカウント検波
の PLL シンセサイザ FM/AM チューナです。
程度&動作チェック
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修理依頼者のコメント
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シンセ式薄型チューナーでパルスカウント検波の音が聴いてみたいと思いヤフオクで入手しました。
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現状、出音は問題ないように思います。
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出品説明には下記のように書いてありました。
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FM/AM トリマコンデンサ交換
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電源部を中心に半田クラックの予防補強
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オーディオ出力端子を新品に交換
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プリセット部のタクトスイッチをクリーナーで洗浄してクッション貼り付け
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天板、フロントパネルを分解して中性洗剤とアルコールで洗浄
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フロントパネルのシミ、汚れをセラミックコンパウンドで磨き
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電源ケーブルをアルコールで洗浄
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同調点、トラッキング、セパレーション調整
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実機を確認し外見と操作感は間違いありませんが、内部の基板の裏を見るスキルがなく目視出来ません。
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この先長く使いたいので、取り替えた方が良いコンデンサ等ありましたら交換と再調整をお願いします。
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外観のチェック
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製造シリアル番号は [DB1012326] で、電源コードの製造マーキングより [1982年製造品] とわかりました。
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[純正 AM ループアンテナ] の添付はありませんでした。
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新品にも見える、かなり綺麗な逸品です。
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前修理者のほうでメンテナンスされたプリセットボタンのクッションは良好です。
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電源 ON してチェック
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電源は入り、操作ボタンは正しく反応し、周波数および各種インディケータは正常に動作します。
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[REC LEVEL CHECK] ボタン ON で正常にテスト音が出ます。
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FM 受信
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周波数ズレはなく、[STEREO] ランプが点灯し正常に受信できます。
問題なさそうです。
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AM 受信
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[純正 AM ループアンテナ] が添付されていなかったので、右の写真の筆者が標準にしているループアンテナを接続してチェックしました。
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SONY ST-SA5ES などの大型ループアンテナです。
中古市場によく出ています。
横幅 28cm、高さ 12cm くらいのサイズです。
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このアンテナと F-120 の相性は良かったです。
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ローカル局は全て受信でき問題なさそうです。
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カバーを開けてチェック
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内部は綺麗で、目視で劣化とわかる部品は見当たりません。
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電解コンデンサは全く交換されていません。
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基板の裏側を眺めてチェック
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RCA 端子は交換されておらず、リードにハンダクラックが見られます。
前回修理者の記事と違います???
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電源周りのパワートランジスタのリードにハンダクラック補修されていません。
前回修理者の記事と違います???
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肝心のリアパネルの端子類にハンダクラック補修されていません。
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FM/AM フロントエンドのトリマコンデンサは交換されていました。
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前回修理者が基板裏側に施したハンダ補修に問題はありません。
というか、数ヵ所しか補修されていません。
リペア (その1):RCA 端子の交換
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概要
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前回修理者の記事には「オーディオ出力端子を新品に交換」とあるのでチェックしたところ、交換されていませんでした。
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しかも、RCA 端子のプラスチック部分が壊れています。
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しかもしかも、リードのハンダ部分をチェックしたところ、ハンダクラックしています。
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前回修理者の言う「オーディオ出力端子」とは RCA 端子じゃないのだろうか???
そうだとすると何をやったのか不明です。
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以上のため、[RCA 端子] を新品に交換します。
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修理
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左の写真は RCA 端子の交換後で、新品なので当たり前ですがピカッと光り輝いています。
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右の写真は取り外した壊れていた RCA 端子です。
赤〇のネジ穴がバカになっています。
青〇箇所の爪が無いです。

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修理後の動作チェック
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L/R とも正常に音が出て、RCA プラグを揺すっても音が途切れないことを確認しました。
リペア (その2):プリセットメモリのバックアップ用電解コンデンサ交換
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概要
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F-120 においては [C513] 2200uF/6.3V 電解コンデンサでプリセットメモリ内容のバックアップをしています。
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AC プラグをコンセントに挿入した状態では、[POWER] スイッチが OFF でもメモリには給電されていてメモリ内容は消えません。
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AC プラグをコンセントから抜くと [C513] でメモリをバックアップします。
取扱説明書によると3日間がバックアップの保証値です。
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なぜか?この [C513] の故障が多いです。
本機は製造から40年以上経っているので交換したほうがよいです。
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修理
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以下のリストのように交換しました。
耐熱105℃品にして信頼性を上げました。
| 部品番号 |
交換前 |
交換後 |
備考 |
| C513 |
2200uF/6.3V (85℃) |
2200uF/6.3V (105℃) |
電解コンデンサ |
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左の写真は [C513] 交換後で、右の写真はこれまで基板に実装されていた古い電解コンデンサです。

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修理後の動作チェック
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プリセットができ、正常にプリセットメモリがバックアップされることを確認しました。
リペア (その3):電源部の電解コンデンサを全数交換
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概要
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修理依頼者より「取り替えた方が良いコンデンサ等の交換」を要求されています。
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電源部の電解コンデンサは熱を発生する部品で取り囲まれています。
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電解コンデンサは熱に弱く、ここに使われる電解コンデンサは他の部分よりはるかに劣化しやすいです。
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修理
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以下のリストのように電源部の電解コンデンサを全数交換しました。
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全て高耐熱品にし、できるだけ高容量・高耐圧にして信頼性を上げました。
| 部品番号 |
交換前 |
交換後 |
備考 |
| C401 |
47uF/50V (85℃) |
47uF/63V (105℃) |
電解コンデンサ |
| C403 |
47uF/50V (85℃) |
47uF/63V (105℃) |
| C404 |
1000uF/35V (85℃) |
1000uF/50V (105℃) |
| C405 |
470uF/35V (85℃) |
560uF/50V (105℃) |
| C406 |
220uF/50V (85℃) |
560uF/50V (105℃) |
| C409 |
47uF/50V (85℃) |
47uF/63V (105℃) |
| C410 |
220uF/50V (85℃) |
560uF/50V (105℃) |
| C411 |
22uF/25V (85℃) |
22uF/50V (105℃) |
| C412 |
2200uF/16V (85℃) |
2200uF/35V (105℃) |
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左の写真は交換後で、黄→で示した電解コンデンサです。
全部で9個です。
最新の部品なのでサイズが小さいです。
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右の写真はこれまで基板に実装されていた古い電解コンデンサです。
半世紀前の部品なのでサイズが大きいです。

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修理後の動作チェック
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FM/AM とも良好に受信できることを確認しました。
リペア (その4):ハンダクラックの補修
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ハンダクラックが発生しやすい箇所
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リアパネルにある [アンテナ端子] [RCA 端子]
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リードのハンダ付け部分にリアパネルと基板の2方向からストレスがかかるのでハンダクラックしやすいです。
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放熱器に実装されたパワートランジスタ
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リードのハンダ付け部分が自身の熱で劣化、かつ放熱器と基板の2方向からストレスがかかるのでハンダクラックしやすいです。
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修理
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左の写真は [RCA 端子] の裏側で、今回、新品に交換したので既に補修済です。
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左の写真の [アンテナ端子] のリードのハンダ付け部分を補修ハンダ付けしました。

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下の写真のパワートランジスタのリードのハンダ付け部分を補修ハンダ付けしました。

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修理後の動作チェック
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端子類とパワートランジスタを揺すってみても異常が発生しないことを確認しました。
リペア (その5):その他
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ディスプレイユニットの封印のやり直し
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[ディスプレイユニット] とは周波数などを表示している表示部です。
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フロントパネルを取り外してチェックしたところ、ディスプレイユニットの封印をセロテープでやっていました。
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これをやったのはパイオニアさんです。
メーカでもこんな酷い処置をするのですね。
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セロテープですから経年変化でボロボロに風化していました。
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セロテープ跡を無水アルコールで除去し、経年変化しない260℃耐熱ポリイミドテープを使って封印し直しました。
再調整
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電圧チェック (VP)
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実測値は以下のように良好でした。
| VP |
標準値 |
実測値 |
判定 |
備考 |
| Q403-C (放熱板) |
+13.7V |
+13.5V |
〇 |
アナログ系 |
| Q405-C (放熱板) |
+5.5V |
+5.46V |
〇 |
デジタル系 |
| R405 (前) |
+26V |
+26.8V |
〇 |
VT 電源 |
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FM/AM 受信部の調整
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調整結果
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FM 受信部
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RF トラッキング調整でややズレがありました。
再調整で感度が上がりました。
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IF WIDE GAIN 調整でややズレがありました。
再調整で規定内に入りました。
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再調整で全ての性能値が向上し音の解像度が上がりました。
| 項目 |
IF BAND |
stereo/mono |
L |
R |
単位 |
| ステレオセパレーション (1kHz) |
WIDE |
stereo |
70 |
70 |
dB |
| NARROW |
37 |
36 |
dB |
| 高調波歪率 (1kHz) |
WIDE |
mono |
0.047 |
% |
| stereo |
0.047 |
% |
| NARROW |
mono |
0.44 |
% |
| stereo |
0.44 |
% |
| パイロット信号キャリアリーク |
WIDE |
stereo |
-60 |
-62 |
dB |
| オーディオ出力レベル偏差 |
WIDE |
mono |
0 |
+0.04 |
dB |
| REC LEVEL CHECK |
WIDE |
mono |
328 |
Hz |
| -6.0 |
dB |
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AM 受信部
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[純正 AM ループアンテナ] が添付されなかったので、IF 調整だけ実施しました。
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2026年4月1日より NHK AM 第2放送が廃止されました。
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2028年には AM 放送自体が終了します。
AM が聴けるのもあと僅かです。
使ってみました
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修理&再調整が終わって
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本機はヤフオク出品者が既に部品交換&再調整をしていると聞いていたので楽勝と思っていました。
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ところが [レポートされた部品が交換されていない] [レポートされた作業がされていない] 状態でした。
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結局、通常の修理と変わらない部品交換&メンテナンス作業が必要になりました。
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オークションの品物ってこんなものです。
中にはマトモなものもあると思いますが、気を付けましょう。
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でも、本機は外観状態が非常に良い
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外観はどうしても直しようがないです。
外観良好は他に代え難いです。
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こういう意味では正解の個体です。
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デザイン
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FM を良い音で聴くためのシンプルデザインです。
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操作系もいたってシンプルです。
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表示は周波数を含め全て LED でシンプルな表示です。
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FM アンテナ入力端子が F 端子なので、妨害電波が混入しないです。
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リアパネルにある [STATION CALL] スイッチで、[FM 8局/AM 8局] [FM/AM ランダム8局] に切換できます。
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普通には [FM 8局/AM 8局] のモードが使いやすいです。
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ステーションメモリには周波数しか記憶されません。
その他の情報は記憶しません。
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FM の感度と音質
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スウェーデン国立放送局のモニタ機
に選定された実力があります。
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感度はかなり良いです。
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ステレオセパレーションが高く、スッキリとしているが比較的柔らかいパイオニアトーンです。
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AM の感度と音質