Pioneer F-120D (4号機) が到着
2026年3月12日、大阪府守口市の Y さんより
Pioneer F-120D
の修理依頼品が到着しました。
程度&動作チェック
-
修理依頼者のコメント
-
昭和60年9月 (1985年) に大阪日本橋の上新電機で購入しました。
-
FM は CATV の変換後周波数で受信しています。
-
FM は -0.2MHz 周波数ズレしており、WIDE ではそこで受信できますが、NARROW では受信できません。
-
AM は問題なく受信できています。
-
外観
-
製造シリアル番号は [FD1010098] で、電源コードの製造マーキングより [1984年製造品] とわかりました。
-
[純正 AM ループアンテナ] が添付されていました。
左右のサイドウッド付きです。
-
ワンオーナーのためか非常に綺麗な逸品です。
-
リアパネルの端子類に若干白いサビが出ていますが、問題はないと思います。
-
電源 ON してチェック
-
電源 ON でき、LED タイプの表示器とランプも問題なく表示できます。
-
操作ボタンやスイッチ類の動作は正常です。
-
この機種でよくあるステーションメモリボタンの動作不良(機構的にうまく押せない。)はなく、正常でした。
-
FM 受信
-
-0.2MHz の周波数ズレがあります。
80.0MHz の放送を 79.8MHz で受信。
-
IF BAND = WIDE では S メータが振れ MUTING に関わらず音が出ます。
ただし、[STEREO] ランプが点灯しません。
-
IF BAND = NARROW では S メータが振れず、MUTING = ON では音が出ません。
-
AM 受信
-
添付された純正 AM ループアンテナを接続して確認しました。
特に問題なく良好に受信できました。
-
カバーを開けてチェック
-
基板は綺麗で、目視で明らかに劣化とわかる部品は見当たりません。
リペア (その1):FM で -0.2MHz の周波数ズレがある
-
原因
-
修理
-
FM 同調点電圧が 0V になるよう [T103] を再調整しました。
-
右の写真で赤〇で囲んだのが [T103] です。
-
修理後の動作チェック
-
放送局の正しい周波数で受信でき、S メータがフルで、[STEREO] ランプが点灯して出てくる音にもステレオ感があります。
-
IF BAND = WIDE/NARROW どちらでも上記のように良好に受信できます。
到着時にあった不具合が全部直りました.
リペア (その2):プリセットメモリをバックアップする電解コンデンサ交換
-
概要
-
F-120D では電解コンデンサ [C505] 2200uF/6.3V でプリセットメモリをバックアップしています。
-
AC プラグをコンセントに入れている状態では [POWER] スイッチに関係なくプリセットメモリに電圧が加えられています。
-
このため、AC プラグをコンセントに入れている状態では、プリセットメモリが消えることはありません。
-
[C505] でメモリをバックアップするのは、AC プラグがコンセントから抜けている時だけです。
-
バックアップ保証期間は3日間なので、そう長くバックアップできる訳ではありません。
-
上記からわかるように、[C505] には常時電源が入っているので劣化しやすいです。
-
容量減少や短絡事故がありえます。
本機は製造後42年経っているので交換時期です。
-
修理
-
下の部品交換リストのように交換しました。
容量・耐圧は同じですが、耐熱性能を上げました。
| 部品番号 |
交換前 |
交換後 |
備考 |
| C505 |
2200uF/6.3V (85℃) |
2200uF/6.3V (105℃) |
電解コンデンサ |
-
左の写真は [C505] 交換前で、一番背の高い円筒形の部品です。
右の写真は交換後です。

-
修理後の動作チェック
-
プリセットのセーブ&コールが正常にできることを確認しました。
-
短時間ですが、電源コードを抜いてもプリセット情報が残っていることを確認しました。
リペア (その3):RCA 端子交換
-
概要
-
RCA 端子は製造後42年も経っているので少しくたびれています。
-
F-120D の互換の新品 RCA 端子台は在庫しているため、この際交換しましょう。
-
修理
-
左の写真は元の RCA 端子です。
金属部分にサビが出ているのと、ベースのプラスチック部分が経年変化で黄ばんでいます。
-
右の写真は交換に使った RCA 端子台です。
当たり前ですが、金属部分はピカピカ輝いており、ベースのプラスチック部分は純白です。

-
修理後の動作チェック
-
RCA プラグをシッカリ差し込め、良好に音が出ることを確認しました。
リペア (その3):ハンダクラック予防補修
-
概要
-
リアパネルの端子類のリードは基板にハンダ付けされています。
-
ハンダ付け部分にはリアパネルと基板の2方向から常にストレスがかかっているので、ハンダクラックしやすいです。
-
放熱器付きのパワートランジスタのリードは基板にハンダ付けされています。
-
ハンダ付け部分には放熱器と基板の2方向から常にストレスがかかっているので、ハンダクラックしやすいです。
-
修理
-
左の写真は FM アンテナ端子、右の写真は AM アンテナ端子の裏側です。
-
ヒョロ長いリードを基板にハンダ付けしており、いかにもハンダクラックしやすそうに見えます。
-
これらのリードのハンダ付け部分を基板の裏側で補修ハンダ付けしました。

-
左の写真は RCA 端子、右の写真は放熱器付きパワートランジスタです。
-
RCA 端子は新品に交換したので補修ハンダ付けは終わっています。
ベースのプラスチック部分は純白です。
-
パワートランジスタのリードのハンダ付け部分を基板の裏側で補修ハンダ付けしました。

再調整
-
電圧チェック (VP)
-
実測値は以下のように良好でした。
| VP |
標準値 |
実測値 |
判定 |
備考 |
| Q601-C |
+13.6V |
+13.8V |
〇 |
TUNER |
| Q605-C |
+5.6V |
+5.60V |
〇 |
MCU |
| R605 (後) |
+28V |
+26.7V |
〇 |
VT |
-
FM/AM 受信部の調整
-
調整結果
-
FM 受信
-
FM 同調点調整が大きくズレていました。
再調整で規定内に入りました。
-
OSC トラッキング調整がややズレていました。
再調整で規定内に入りました。
-
RF トラッキング調整で感度が大きく上がりました。
RF トリマコンデンサは正常に容量変化しました。
-
PLL 検波調整が大きくズレていました。
再調整で規定内に入りました。
-
ステレオセパレーションは調整前 20dB 台だったのが、再調整で素晴らしい値が出ました。
当たりの個体です。
-
再調整で以下のような優秀な性能に復活しました。
| 項目 |
IF BAND |
stereo/mono |
L |
R |
単位 |
| ステレオセパレーション (1kHz) |
WIDE |
stereo |
70 |
70 |
dB |
| NARROW |
40 |
44 |
dB |
| 高調波歪率 (1kHz) |
WIDE |
mono |
0.014 |
% |
| stereo |
0.014 |
% |
| NARROW |
mono |
0.16 |
% |
| stereo |
0.16 |
% |
| パイロット信号キャリアリーク |
WIDE |
stereo |
-58 |
-57 |
dB |
| オーディオ出力レベル偏差 (1kHz) |
WIDE |
mono |
0 |
+0.06 |
dB |
| REC LEVEL CHECK 信号 |
WIDE |
mono |
305 |
Hz |
| -6.0 |
dB |
-
AM 受信
-
添付された [純正 AM ループアンテナ] を接続して調整しました。
-
OSC トラッキング調整がややズレていました。
再調整で規定内に入りました。
-
RF トラッキング調整で感度が少し上がりました。
-
RF/OSC トリマコンデンサは正常に容量変化しました。
使ってみました
-
修理&再調整が終わって
-
ワンオーナで大切に使われていたと思われ、主に経年変化に伴う調整ズレの再調整だけで、修理はスムーズでした。
-
結果、全ての不具合が直り、新品時の性能に蘇り、パルスカウント検波独特の素晴らしい音質になりました。
-
デザイン
-
デザインはかなり良いです。
-
コンパクトで薄型で奥行きもそれほどでもないです。
-
シンプルな操作系で使いやすいです。
-
誰もが
素直に良い音
と感じるチューナです。
やはりパルスカウント検波の音は別格です。
-
FM 受信では、良好な感度があり、ステレオセパレーションが非常に良く音が生き生きしています。
-
AM 受信では、感度が良く、IF BAND = WIDE の音は高域が伸びており良い音です。