Pioneer TX-8800Ⅱ (2号機) が到着
2023年11月28日、東京都三鷹市の O さんより
Pioneer TX-8800Ⅱ
の修理依頼品が到着しました。
程度&動作チェック
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修理依頼者のコメント
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30年ほど前に中古で TX-8800Ⅱ を入手して使用してきました。
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スケール針が若干ずれているのが気になっていたくらいで使用できていました。
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3年ほど前から以下の不具合が出始めました。
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電源投入後3分ほどで音が出なくなる。
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チューニングメーターの針ががセンターに移動しない。
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音が出ている間 AUTO ポジションで Rch. の音声が出ない。
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STEREO ランプが点灯しない。
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ミュートレバーを操作してもミュートにならない。
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きちんと使用できる状態に修理お願いします。
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外観
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製造シルアル番号は [XD1062712] で、電源コードの製造マーキングより [1977年製造品] とわかりました。
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全体にかなり綺麗で、指摘するような問題はありません。
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電源 ON して動作チェック
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[STEREO] ランプはわからないのですが、その他のランプは正常に点灯します。
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チューニングノブ、ツマミ、レバーは正常に動作します。
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FM 受信
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[S メータ] は正常そうに振れますが、[T メータ] は左端になったままで同調ノブを回しても動きません。
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[STEREO] ランプは点灯しませんが、これは [T メータ] がセンタにならないからと思います。
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T メータが NG なので S メータを頼りに受信すると、-0.3MHz 程度の周波数ズレがあります。
80MHz の放送が 79.7MHz で受信。
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以上の状況なのでモノラルでしか受信きませんが、出てくる音はマトモそうです。
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[REC LEVEL CHECK] スイッチ ON で正常にテスト音が出ます。
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修理依頼者の言う「電源投入後3分ほどで音が出なくなる」「音が出ている間 AUTO ポジションで Rch. の音声が出ない」は確認できませんでした。
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AM 受信
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カバーを開けて内部をチェック
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少しホコリはありますが、綺麗な状態です。
目視で劣化とわかる部品は見当たりません。
リペア (その1):T メータは左端になったままで同調ノブを回しても動かない
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調査
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下の回路図はクォードラチュア検波の部分で、[PA3001] で [検波] [S メータ抽出] [T メータ抽出] を行います。
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[T メータ抽出] 電圧は [PA3001] の 7~10pin 間に現れます。
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同調すると 7~10pin 間電圧=0V になります。
[T メータ] はこの電圧で振れています。
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電圧測定すると、10pin は 7V で正常ですが、7pin が常に 1.2V でした。
これが [T メータが左端になったまま] の要因です。
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音を聞いていると、T メータが左端になったまなのに音は正常に出て、検波 S カーブは正常そうです。
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こうなると [PA3001] の故障臭いです。
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[PA3001] を IC ソケット化してから交換してみましたが、[T メータが左端になったまま] は変わりませんでした。

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まさかとは思いましたが、[Q8] の FET を交換したら直りました!!!
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FET が故障して [PA3001] の 7pin を 1.2V に引っ張っていたのです。
これが原因です。
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正式対策
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故障していたのは [Q8] ですが、これが [PA3001] の 7pin を引っ張っていたので、[PA3001] も劣化した心配があります。
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[PA3001] の 7pin は出力であり、ここに外部から 1.2V かかっていたので、IC 内部が劣化します。
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[PA3001] も交換したほうがよいです。
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以下の表は正式対策の部品交換リストで、右の写真は部品交換後です。
| 部品番号 |
交換前 |
交換後 |
備考 |
| Q5 |
PA3001 |
PA3001 |
クォードラチュア検波 IC |
| Q8 |
2SK30A |
BF256B |
FET |
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赤〇で囲んだのが [Q5 (PA3001)]、黄〇で囲んだのが [Q8 (FET)] です。
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動作チェック
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同調ノブの動きに同期して正しく [T メータ] が振れるようになりました。
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同時に [STEREO] ランプが点灯するようになり、音もステレオになりました。
リペア (その2):各スイッチで接触不良が発生している
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再調整中に気が付きました。
例えば、以下です。
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[IF BAND=WIDE でしか効かない可変抵抗調整器] [IF BAND=NARROW でしか効かない可変抵抗調整器] があるのですが、これがうまく切り換わらないのです。
この時は [IF BAND] スイッチを何回も ON/OFF を繰り返すと直りました。
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[MUTING] スイッチを ON にしてもミューティング状態にならない。
この時は [MUTING] スイッチを何回も ON/OFF を繰り返すと直りました。
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スイッチを交換できればよいのですが、TX-8800Ⅱに使われているスイッチ類は専用品で、代替品が市場にありません。
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やむを得ないので、以下のように接触不良回復作業しました。
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[IF BAND] [REC LEVEL CHECK] [MUTING] [FUNCTION] スイッチの基板側の隙間から
エレクトロニッククリーナ
を噴射して何度も ON/OFF を繰り返して接点洗浄しました。
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エレクトロニッククリーナが蒸発してから
接点復活スプレー
を少量噴射して何度も ON/OFF を繰り返して接点復活させました。
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これでスイッチの接点は回復しました。
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修理依頼者の言う多くの不思議な不具合現象は、これで直ったと思います。
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スイッチを交換した訳ではないので、接触不良が再発する可能性はあります。
その時は再度、洗浄→復活 作業すると直ると思います。
再調整
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電圧チェック (VP)
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実測値は以下のように良好でした。
| 基板 |
VP |
標準値 |
実測値 |
| 電源基板 |
2番端子 |
+13V |
+13.6V |
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FM/AM 受信部の調整
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調整結果
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FM 受信
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-0.3MHz の周波数ズレがありましたが、トラッキング調整で ±0.1MHz の誤差にできました。
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バリコンや糸掛けというアナログ機構なので完全に誤差ゼロにすることは無理です。
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FM ステレオセパレーションなどは以下となりました。
良好な数値です。
| 項目 |
IF BAND |
stereo/mono |
L |
R |
単位 |
| ステレオセパレーション (1kHz) |
WIDE |
stereo |
55 |
55 |
dB |
| NARROW |
50 |
49 |
dB |
| 高調波歪率 (1kHz) |
WIDE |
mono |
0.037 |
% |
| stereo |
0.073 |
% |
| NARROW |
mono |
0.30 |
% |
| stereo |
1.1 |
% |
| パイロット信号キャリアリーク |
WIDE |
stereo |
-67 |
-65 |
dB |
| オーディオ出力レベル偏差 |
WIDE |
mono |
0 |
+0.06 |
dB |
| REC LEVEL CHECK 信号 |
WIDE |
mono |
430.7 |
Hz |
| -6.0 |
dB |
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AM 受信
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元々問題がなかったのですが、再調整で少しだけ感度が上がりました。
使ってみました
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デザイン
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フロントパネルのヘアラインアルミは厚く、文字は墨入れを施した彫刻で豪華です。
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ダイヤルスケールの透明板はガラスです。
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ダイヤルスケールの下側の飾りサッシがデザインのアクセントになっています。
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チューニングノブは無垢アルミで、適度な重みがありスムーズに回転します。
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ダイヤル指針やダイヤルスケールが腕時計の文字盤ような仕上げでキンキラです。
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ドッシリとして重厚な安定感がありますが、大型アンプ並みの大きさと重さです。
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性能・音質
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FM 受信で十分な性能があります。
音質はソフトな感じがしますが良い音です。
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AM 受信の性能は普通です。
音も普通のチューナよりはイイです。