SONY ST-S333ESG (13号機) が到着
2024年2月26日、福岡県粕屋郡の N さんより
SONY ST-S333ESG
の修理依頼品が届きました。
再調整だけの依頼でしたが・・・
程度&動作チェック
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依頼者のコメント
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外観
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製造シリアル番号は [210349] で、電源コードの製造マーキングより [1991年製造品] とわかりました。
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[純正 AM ループアンテナ] の添付はありませんでした。
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サイドウッドは取り外して送られたそうですが、綺麗な逸品で特に指摘する箇所はありません。
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電源 ON にてチェック
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電源は問題なく入り、ディスプレイの輝度は新品同様に明るく、各ボタンやノブの操作は正常です。
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オーディオ出力の R チャンネル端子を揺すると音が途切れます。
ハンダクラックしていると思います。
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プリセットメモリが全部クリアされて初期値に戻っていました。
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メモリバックアップ用の電気二重層コンデンサが劣化していると思います。
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FM 受信
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S メータの振れが少なく感度落ちしています。
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ST-S333ESG はアンテナ入力 70dB (81dBf) でフル (10レベル) になる仕様ですが、70dB 入力しても4レベルです。
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問題なく受信でき、周波数ズレはなく、[STEREO] 表示も点きました。
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到着時の状態で現状の FM 性能を測定してみました。
問題ない性能を保っていました。
| 項目 |
IF BAND |
stereo/mono |
L |
R |
単位 |
| ステレオセパレーション (1kHz) |
WIDE |
stereo |
54 |
60 |
dB |
| 高調波歪率 (1kHz) |
WIDE |
mono |
0.022 |
% |
| stereo |
0.022 |
% |
| パイロット信号キャリアリーク |
WIDE |
stereo |
-48 |
-60 |
dB |
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AM 受信
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[純正 AM ループアンテナ] の添付がなかったので [ST-SA5ES 純正 AM ループアンテナ] を接続してチェックしました。
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問題なく受信でき、S メータも振れ、音も出ます。
感度も良好です。
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カバーを開けてチェック
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基板にスス状のゴミが薄っすらと堆積しています。
目視で劣化とわかる部品は見られません。
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FM フロントエンドのトリマコンデンサは劣化しやすいので放送波でチェックしてみました。
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[CT102] は回しても容量変化がなく故障しています。
[CT101] [CT103] もリニアな容量変化をせず劣化しています。
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修理依頼者よりは「問題なく使えている」とのことでしたが、以上で述べた不具合があり、どうするか
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少しずつ劣化していくので、修理依頼者のほうでは気付いていなかったようです。
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修理依頼者と相談して修理も行うことになりました。
リペア (その1):FM で S メータの振れが少なく感度落ちしている
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原因
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FM フロントエンドにあるトリマコンデンサ [CT101] [CT102] [CT103] が故障・劣化したためです。
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[トリマコンデンサ] はハトメ構造になっており、経年変化でハトメ部分が接触不良になって容量抜けします。
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こうなると FM の感度が低下します。
少しずつ徐々に不良になっていくので気付くのが遅れます。
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ST-S333ES シリーズでは [トリマコンデンサ] の故障が散見されます。
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修理
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[トリマコンデンサ] ×3個を一斉交換しました。
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左の写真で赤〇で囲んだ部品が交換後です。
10pF セラミックトリマコンデンサを使いました。
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右の写真は交換前に基板に実装されていたトリマコンデンサです。

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修理後の動作確認
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トリマコンデンサ調整すると、感度が上がって S メータがビュ~ンと振れるようになりました。
直りました。
リペア (その2):[電気二重層コンデンサ] [タンタルコンデンサ] の交換
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概要
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[電気二重層コンデンサ] は電源 OFF 時のプリセット情報をバックアップします。
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[タンタルコンデンサ] は短絡事故が多く、別の種類のコンデンサに交換すると幸せになります。
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使われていたタンタルコンデンサの耐圧が 6.3V しかありません。
ここには 6V 近くの電圧がかかります。
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タンタルコンデンサは耐圧を超えた電圧がかかると簡単に内部短絡します。
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半世紀前に [人気者] だったタンタルコンデンサは、現在では短絡事故が多いことから [嫌われ者] になっています。
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換装する積層セラミックコンデンサはタンタルより ESR が低く高性能でやや高価な無極性コンデンサです。
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交換
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左の写真で、小さな赤〇で囲んだのが [C604]、大きな赤〇で囲んだのが [C605] の交換後です。
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右の写真は交換前に基板に実装されていた [C605] [C604] です。

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以下は交換リストです。
| 部品番号 |
交換前 |
交換後 |
備考 |
| C604 |
10uF/6.3V (タンタル) |
10uF/25V (積層セラミック) |
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| C605 |
0.1F/5.5V |
1F/5.5V |
電気二重層コンデンサ |
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電気二重層コンデンサは 0.1F → 1F と10倍の容量になったので、10倍の10ヶ月メモリ保持できるかも?
リペア (その3):R チャンネル端子を揺すると音が途切れる
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原因
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写真はオーディオ出力端子のリードの基板でのハンダ付け部分です。
赤〇が L チャンネル、黄〇が R チャンネルです。
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L/R チャンネルとも見事にハンンダクラックしています。
これが音が途切れる原因です。
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〇で囲んだリードの周りが同心円状にヒビ割れしているのがハンダクラックです。
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FM アンテナ端子も A/B ともハンダクラックしていました。

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解説
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リアパネルにある端子のリードは基板に直接ハンダ付けされています。
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このハンダ付け部分には [リアパネル] [基板] の2方向から常にストレスを受けるのでハンダクラックしやすいのです。
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基板に銅板が走っていますが、これはアースバーです。
このアースバーのハンダ付け部分もハンダクラックしやすいです。
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修理
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[FM ANTENNA (A/B)] [AM ANTENNA] [OUTPUT] 端子のリードのハンダ付け部分を補修ハンダ付けしました。
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8本あるアースバーのハンダ付け部分を補修ハンダ付けしました。
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補修ハンダ付けは、古いハンダを吸引して除去し、新しいハンダを付けるのが正しいやり方です。
リペア (その4):基板にスス状のゴミが薄っすらと堆積している
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刷毛とエアブロアを使って清掃してマシになりました。
基板には部品が乗っているので、完全な清掃はできないです。
再調整
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電源電圧チェック (VP)
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実測値は以下のように良好です。
| VP |
表示電圧 |
実測電圧 |
判定 |
備考 |
| JW88 |
+30V |
+30.3V |
〇 |
PLL |
| JW89 |
+15V |
+14.9V |
〇 |
AUDIO |
| JW145 |
-17V |
-17.5V |
〇 |
FL |
| JW213 |
+13V |
+13.5V |
〇 |
DIGITAL |
| JW220 |
+5V |
+5.69V |
〇 |
DIGITAL |
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FM/AM 受信部の調整
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調整結果
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FM 受信部
| 項目 |
IF BAND |
stereo/mono |
L |
R |
単位 |
| ステレオセパレーション (1kHz) |
WIDE |
stereo |
64 |
70 |
dB |
| NARROW |
47 |
45 |
dB |
| 高調波歪率 (1kHz) |
WIDE |
mono |
0.014 |
% |
| stereo |
0.014 |
% |
| NARROW |
mono |
0.14 |
% |
| stereo |
0.14 |
% |
| パイロット信号キャリアリーク |
WIDE |
stereo |
-68 |
-73 |
dB |
| オーディオ出力レベル偏差 |
WIDE |
mono |
0 |
+0.01 |
dB |
| CAL TONE 信号 |
WIDE |
mono |
430.7 |
Hz |
| -5.7 |
dB |
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AM 受信部
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[純正 ST-SA5ES AM ループアンテナ] で最高感度になるように調整しました。
使ってみました
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修理&再調整が終わって
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使っている人が気が付いていなくとも、このようなビンテージチューナでは色々劣化していることが多いです。
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全て修理でき、新品時の性能に蘇ってよかったです。
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全体的にブラック基調のデザイン
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SONY デザインはやはり格好イイです。
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デザインが良くて性能も良い、持つべき価値があります。
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フロントパネルはアルミ材で、ヘアライン仕上げです。
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FM 受信
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感度も S/N も一級品です。
微弱電波もしっかり捉えます。
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解像度がある素晴らしい音。
現代の安物チューナーとは全く異次元の音です。
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AM 受信
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感度は良いです。
ループアンテナでしっかり入感します。