Aurex ST-F15K

Aurex ST-F15K をゲット！

2007年11月2日、 生活創庫 草加本店で、かなり汚い Aurex ST-F15K が税込1,500円でした。

FM 専用機 で 定価62,000円 もします。

前々から中を見てみたい機種でしたのでゲット！しました。

• 1978年にグットデザイン賞を受賞しているので、おそらく1978年か1977年の発売と思います。
  
  
• Aurex（オーレックス）と言っても判らない方もいるかと思います。 昔々、東芝のオーディオブランドが Aurex でした。
  
  

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程度＆動作チェック

1. 外観
   
   
   • 外観は汚いのですが、キズ自体は少なく、クリーニングで綺麗になりそうです。
     
     
2. 電源 ON してチェック
   
   
   • 電源は問題なく入りました。 FL ディスプレイの輝度は新品同様に明るいです。 操作ボタンの反応も正常です。
     
     
   • 周波数ズレはなく、[STEREO] 表示も出て音も正常です。
     
     
   • 時々（5～6分に1回程度）、ほんの一瞬音が途切れる現象があります。
     
     

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カバーを開けてみました

1. 小型にするため、小さい基板にギッシリ部品が乗っています。 写真をクリックすると拡大写真を表示できます。
   
   
   • 写真は上部カバーを半開けして撮影しています。 写真の上1/5くらいが上部カバーです。
     
     
   • 基板は二階建て構造で、 一階は [チューナ基板] で、二階は [表示基板] です。
     
     
   • ステーションメモリボタンは（リモコンで使っているような）ラバースイッチでした。
     
     
     • これなら接触不良は発生しにくいです。
       
       
   • 以下の IC を使用して合理化が図られています。 IC は5個だけです。
     
     

     メーカ	IC	機能
     HITACHI	HA11225	FM IF System
     TOSHIBA	TA7624P	FM Stereo Decoder
     	TC9123P	FM PLL Synthesizer
     	TC9124AF	MCU
     	TD6102P	ECL Prescaller

     
     
   • 使用 IC のロット番号より、本機は [1978年製造品] と判明しました。
     
     
2. フロントエンド
   
   
   • 5連バリキャップ方式で、同調回路はトラッキング調整できる構成です。 以下のかなりマトモな構成です。
     
     (ANT)→[同調]→[Dual Gate MOS FET]→[同調]→[同調]→[同調]→①→[Mixer : Dual Gate MOS FET]→[IFT]→(IF)
     [OSC 同調 : TR]→①
     
     
3. IF 部
   
   
   • 以下のシンプルな構成です。
     
     (FE)→[TR]→[CF]→[CF]→[TR]→[CF]→[HA11225]→(MPX)
     
     
   • 検波は [HA11225] によるクォードラチュア検波です。
     
     
4. MPX 部
   
   
   • [TA7624P] を使った PLL MPX です。
     
     
5. プリセットメモリのバックアップ
   
   
   • 電源コードを抜いてから1～2日間、1000uF 電解コンデンサでバックアップします。
     
     
   • 電源コードを入れたままであれば、[POWER] スイッチ OFF でもメモリに電源供給され続けるので消えません。
     
     

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リペア

1. 時々、ほんの一瞬音が途切れる
   
   
   • 調査
     
     
     1. ステレオ／モノに関係なく音が途切れることより、ミューティング回路を疑いました。 検討するために基板から一部の回路を回路図化しました。 回路図をクリックすると拡大回路図を表示できます。 BSch3V 回路図データは これ です。
        
        
     2. Q918 の C-E 間を短絡すると同じ現象が出ました。 そうすると、Q918 かその後の Q917 の B 入力に不具合あることになります。 Q918 または Q917 自体の不良の可能性も視野の内です。
        
        
     3. Q917 の B に組み込まれたダイオード OR 回路により、以下の条件のどれか（OR）でミューティングが掛かります。
        
        
        1. Q918 が ON になった
        2. D939 のカソード側の電位が0V になった
        3. D943 のカソード側の電位が0V になった
        4. D946 のカソード側の電位が0V になった
        
        
     4. 上記を切り分けるため、以下の観測点に電圧計とシンクロスコープを接続して監視しました。 現象が5～6分に1回なので、気長にやります。 じっと計器を眺めて待っているのが辛いです・・・ビールをチビチビやりながら待ちました。
        
        
        1. Q918 の C と GND 間 ・・・ 問題なし
        2. D939 のカソード側と GND 間 ・・・ 問題なし
        3. D943 のカソード側と GND 間 ・・・ 問題なし
        4. D946 のカソード側と GND 間 ・・・ 一瞬電位が0V になった ・・・ これだ！
        
        
     5. D946 のカソードにつながっている（電圧を供給する）のは TD9123P という FM PLL Synthesizer チップ（IC）の18pin です。 仮にこの接続を外してみたら「ほんの一瞬音が途切れる現象」はなくなりました。 ただし、ステーションメモリボタンを切り換える時に「ジャー」という雑音が出るようになりました。 この接続は PLL ロックするまでの雑音を消去（ミュート）するためだったのです。
        
        
     6. TD9123P は PLL なので内部回路のほとんどはカウンタと比較回路のはずです。 以下の仮定をたてました。
        
        
        1. この IC が誤動作している
        2. この IC とつながっている MPU の TC9124AC から不正命令が出る、または誤動作をしている
        
        
     7. TC9123P の電源供給の安定化（誤動作対策）と若干の時定数変更をやります。
        
        
   • 対策
     
     
     • TD9123P の電源バイパスを強化しました。47uF/16V を電源バイパス用として新規追加しました。
       
       
     • 電源回路の電解コンデンサを交換しました。C912 330uF/16V → 1000uF/16V, C913 100uF/10V → 220uF/16V としました。
       
       
     • C920 1uF 50V の－側と GND 間に5.1MΩの抵抗を追加。
       
       
     • R970 470kΩと並列に 18kΩの抵抗を追加。
       
       
2. クリーニング
   
   
   • 全体を OA クリーナーで洗浄したら、タバコのヤニと思われる黄色の汚れが大量に取れました。
     
     
   • このチューナは密閉構造のため、内部は綺麗でした。 軽くエアブローしただけです。
     
     
   • スイッチのツマミは全て取り外し、OA クリーナと無水アルコールにて洗浄しました。 元のメタル感が出ました。
     
     
   • あちこちにある細かいキズはタッチペイントで補修して目立たなくしました。
     
     

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調整

写真の FM/AM 標準信号発生器 Panasonic VP-8175A (以下 SSG)、 FM Stereo 信号発生器 MEGURO MSG-2170、 周波数カウンタ ADVANTEST TR5822 を使って調整します。 10年も経つとコイルやトリマはズレます。

　　

1. 調整ポイント
   
   
   
   
2. FM 受信部の調整
   
   

   手順	SSG出力	ST-F15K の設定	調整箇所	TP 及び調整値	備考
   1	-	MONO : OFF REC CAL : OFF	-	-
   2	83MHz 90dB 無変調	83MHz 受信	T101 赤コア	R113 両端電圧 = 0±10mV	同調点(仮)調整
   3	-	76MHz 受信	T006	R014 電圧 = 3.0～4.0V	OSC トラッキング調整
   4	-	90MHz 受信	C025	R014 電圧 = 10V
   5	手順3～4を数回繰り返す
   6	76MHz 30dB 無変調	76MHz 受信	T001 T002 T003 T004	R120 電圧 = 最大	RF トラッキング調整
   7	90MHz 30dB 無変調	90MHz 受信	C021 C022 C023 C024
   8	手順6～7を数回繰り返す
   9	83MHz 30dB 無変調	83MHz 受信	T005	R120 電圧 = 最大	IF 調整
   10	83MHz 90dB mono 1kHz	83MHz 受信	T101 青コア	オーディオ出力 = 高調波歪率最小	QR 検波調整
   11			T101 赤コア	R113 両端電圧 = 0±10mV
   12	手順10～11を数回繰り返す
   13	83MHz 90dB stereo 1kHz L+R	83MHz 受信	R224	以下の [VCO 調整手順] を参照	VCO 調整
   14	83MHz 60dB 無変調		R120	S メータ = フル 閾	S メータ調整

   
   
   • VCO 調整手順
     
     

     手順	備考
     1	R224 を反時計方向に回し切る
     2	R224 を徐々に時計方向に回し、[STEREO] 表示が点灯した位置を記録する
     3	R224 を時計方向に回し切る
     4	R224 を徐々に反時計方向に回し、[STEREO] 表示が点灯した位置を記録する
     5	R224 を [手順2] と [手順4] の中間に設定する

     
     

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操作方法

1. 4つの選局方法
   
   
   • マニュアルチューニング
     
     
     • [UP] [DOWN] ボタンを何度か押して目的の放送局の周波数に合わせます。
       
       
   • オートチューニング
     
     
     • [AUTO] ボタンを押すと AUTO LED が点灯します。
       
       
     • この状態で [UP] [DOWN] ボタンを押すと放送局を自動的に探してから AUTO LED が消灯します。
       
       
   • ダイレクトチューニング
     
     
     • [MANU] ボタンを押すと周波数をダイレクト入力できるモードになります。
       
       
     • [1]～[0] ボタンを押して希望の周波数を表示器に表示させ、[AUTO] ボタンを押すとその周波数で受信します。
       
       
   • メモリチューニング
     
     
     • [MEMO] [AUTO] ランプが消灯状態で [1]～[0] ボタンを押すと、そのボタンにプリセットされた周波数で同調します。
       
       
2. ステーションメモリへのプリセット方法
   
   
   1. 目的の周波数で同調（選局）します。
      
      
   2. [MEMO] ボタンを押すと MEMO LED が点灯し、[1]～[0] ボタンのどれかを押すと、そのボタンに周波数がプリセットされます。
      
      
      • [MEMO] ボタンを押してから何も操作しないと、約30秒後に MEMO LED が消灯します。
        
        
3. その他のボタン
   
   
   • [POWER] ボタン
     
     
     • 電源 ON/OFF します。
       
       
   • [MONO] ボタン
     
     
     • [MONO] ボタンが押されていると MONO LED が点灯します。 この状態では、常にモノラルで放送を受信します。
       
       
     • MONO LED を消灯状態にしておくと、放送に合わせて STEREO/MONO が自動的に切り換わります。
       
       
   • [REC CAL] ボタン
     
     
     • [REC CAL] ボタンが押されていると REC CAL LED が点灯し、録音機のレベル調整用の信号を出力します。
       
       

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使ってみました

1. 1978年 グッドデザイン賞を受賞
   
   
   • デザインはかなり良いほうと思います。 ディスプレイも緑一色でアッサリしています。
     
     
   • 高級マイクロコンポのチューナで、257(W)×54(H)×196(D)mm と非常にコンパクトです。
     
     
   • 筐体全部がアルマイト処理をされたアルミ材
     
     
     • 3～5mm のアルミ材が使われており、持つとズッシリ重く、質感が抜群に良いです。
       
       
   • リアパネルは F 端子と RCA 端子だけと超シンプル
     
     
     • 当時、F 端子を備えたチューナーは高級機だけでした。
       
       
     • RCA 端子は厚めの金メッキが施されています ・・・ これも高級機だけでした。
       
       
   • ステーションプリセットメモリは10局分
     
     
     • この10局分というのがミソで、ダイレクト選局ではこのボタンが10キーとなります。
       
       
2. 感度と音質
   
   
   • 選択度・妨害排除能力はかなり良好です。 感度も音質もなかなか良く、普通には十分な性能です。
     
     
   • 音質は大人しい感じです・・・でも低音も高音もキッチリ出ています・・・聴き疲れしない。
     
     

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S メータ

• アンテナ入力レベルと S メータの振れの相関関係を測定してみました。 1～5 とあるのはレベル表示、×が消灯、○は点灯です。
  
  
• これを見ると、S/N 良く受信するためには、レベル5の必要があるようです。 レベルメータの振れはバブルですね・・・
  
  

  アンテナ入力 (dB)	1	2	3	4	5
  ～24	○	×	×	×	×
  25～27	○	○	×	×	×
  28～31	○	○	○	×	×
  32～39	○	○	○	○	×
  40～	○	○	○	○	○

  
  

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仕様など

1. ドキュメント
   
   
   • ST-F15 (K) Owner's Manual (輸出版)
     
     
   • ST-F15 (K) Service Manual (輸出版、参考にはなるが同じではない)
     
     
2. 仕様
   
   

   FM チューナ部
   受信周波数範囲	76～90MHz
   アンテナインピーダンス	75Ω不平衡
   感度（75Ω）	0.9μV / 10.8dBf
   実効選択度	75dB (±400kHz)
   ステレオセパレーション	45dB (1kHz)
   高調波歪率	0.15% (mono) / 0.25% (stereo)
   S/N 比	72dB (mono) / 68dB (stereo)
   キャプチャーレシオ	1.0dB
   イメージ妨害比	50dB
   IF 妨害比	80dB
   スプリアス妨害比	100dB
   AM 抑圧比	50dB
   周波数特性	30Hz～15kHz +0.5 -1.5dB
   出力レベル/インピーダンス	0.6V/2kΩ (400Hz, 100%変調)
   電源	AC100V 50/60Hz
   定格消費電力	7W
   外形寸法	257(W)×54(H)×196(D)mm
   重量	2.2kg
   その他
   発売時期	1978年6月
   定価	62,000円

   
   

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