Technics ST-8077 (2号機) が到着
2026年3月17日、愛知県愛知郡の N さんから
Technics ST-8077
の修理依頼品が到着しました。
ブラックモデルなので ST-8077K とも呼ばれます。
[K] は黒の意味だと思うのですが、海外輸出モデルも ST-8077K です。
[黒] は世界でも通じる?
程度&動作チェック
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修理依頼者のコメント
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2024年2月に
ハードオフ
徳重店で購入しました。
FM/AM とも受信でき不具合はないように思います。
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コントロールスイッチ全5個ともロックできません。
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複数の電解コンデンサで液漏れがあります。
C18, C105, C111, C301, C312, C406, C413, C503, C605
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電源部の電解コンデンサを予防交換、液漏れ電解コンデンサを交換をお願いします。
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オーディオ信号通過の電源コンデンサを交換、コントロールスイッチの点検をお願いします。
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受信再調整、ハンダ付け点検をお願いします。
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外観のチェック
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製造シリアル番号は [FB8L01B097] で。電源コードの製造マーキングは [1978年] でした。
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全体的には並みの中古状態より劣ります。
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フロントパネルはまあまあ綺麗ですが以下の問題もあります。
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上側エッジに細かいキズが何か所もあります。
[TUNING] ノブの先端エッジにキズがあります。
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[POWER] スイッチ以外のスイッチは奥側にラッチできません。
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上記のスイッチは爪の先で押すとラッチするので、基板かスイッチ本体の位置がズレているような気がします。
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リアパネルの RCA 端子にはピカピカした輝きがあります。
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天板にスレや線キズが多いです。
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電源 ON してチェック
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電源は正常に ON でき、ランプ切れはなく、操作スイッチも (ラッチできませんが) 正常に反応します。
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[rec level check] スイッチでテスト音が正常に出ます。
特に問題なさそうです。
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カバーを開けてチェック
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なぜか?天板カバーを取り外し難かったです。
天板カバーを垂直に持ち上げるのですが、どこかに引っかかっているような。
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使用 IC のロット番号より、本機は [1979年製造品] とわかりました。
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[POWER] スイッチ以外のスイッチがラッチできない原因がわかりました。
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右の写真を見てわかるように、フロントパネルが傾いているのが原因です。
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スイッチより遠くなる方向なのでスイッチトップをラッチできる位置まで押し込めないのです。
爪の先で押し込んでラッチできたのは奥まで押し込めたからです。
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シャーシが歪んだのでフロントパネルが傾いているのですが、過去に何らかの大きな力 (落下とか) がフロントパネルに加わったようです。
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直すには板金曲げが必要で、やってみないと修理できるかわかりません。
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内部は非常に綺麗ですが、電解コンデンサの足を見ると、かなり数の電解液漏れが見られます。
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電解液漏れは普通はあっても1~2個ですが、本機は数が多過ぎです。
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この頃 (1979年) の Panasonic 製電解コンデンサの製造品質に問題があったのかもしれません。
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いずれにしても、もう製造後半世紀近く経っているので時効です。
リペア (その1):電解コンデンサ交換
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概要
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修理依頼者より [電源部] [オーディオ信号通過] [液漏れ] 電解コンデンサの交換要求がありました。
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修理
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電解コンデンサの交換リストは以下です。
| 交換理由 |
部品番号 |
交換前 |
交換後 |
備考 |
電源部 予防交換 |
C601 |
2200uF/16V (85℃) |
2200uF/35V (105℃) |
高耐圧・高耐熱品に交換 |
| C602 |
2200uF/16V (85℃) |
2200uF/35V (105℃) |
| C603 |
470uF/25V (85℃) |
1000uF/25V (105℃) |
高容量・高耐圧・高耐熱品に交換 |
| C605 |
47uF/6.3V (85℃) |
100uF/25V (105℃) |
オーディオ 信号通過 |
C115 |
10uF/16V (85℃) |
10uF/50V (FG) |
オーディオクラス品に交換 |
| C415 |
10uF/16V (85℃) |
10uF/50V (FG) |
| C501 |
0.47uF/16V (85℃) |
0.47uF/50V (MUSE/BP) |
無極性オーディオクラス品に交換 |
| C502 |
0.47uF/16V (85℃) |
0.47uF/50V (MUSE/BP) |
| C505 |
3.3uF/16V (85℃) |
3.3uF/50V (MUSE/BP) |
| C506 |
3.3uF/16V (85℃) |
3.3uF/50V (MUSE/BP) |
| 電解液漏れ |
C18 |
47uF/16V (85℃) |
100uF/25V (105℃) |
高耐圧・高耐熱品に交換 |
| C105 |
10uF/16V (85℃) |
10uF/50V (105℃) |
| C111 |
10uF/16V (85℃) |
10uF/50V (105℃) |
| C301 |
100uF/6.3V (85℃) |
100uF/25V (105℃) |
| C312 |
10uF/16V (85℃) |
10uF/50V (105℃) |
| C406 |
10uF/16V (85℃) |
10uF/50V (105℃) |
| C413 |
100uF/16V (85℃) |
100uF/25V (105℃) |
| C503 |
47uF/16V (85℃) |
100uF/25V (105℃) |
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左の写真で赤枠で囲んだのが電源部の電解コンデンサです。
全て高耐圧・高耐熱品に交換済みです。
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右の写真で赤枠で囲んだのがオーディオ信号が通過する電解コンデンサです。
全てオーディオクラス品に交換済みです。

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左の写真は電解液漏れした電解コンデンサの交換後です。
この他にも交換していますが写真は省略します。
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右の写真は、交換前に基板に実装されていた古い電解コンデンサです。

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修理後の動作チェック
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電源回路の出力電圧が正常で、チューナとして正常に動作することを確認しました。
リペア (その2):ハンダクラック予防補修
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概要
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修理依頼者より「ハンダ付け点検」の要求がありました。
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修理
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左の写真は RCA 端子裏側で、右の写真はアンテナ端子裏側で、リードが基板に直接ハンダ付けされています。
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ハンダ付け部分には、リアパネルと基板の2方向から常にストレスを受けるのでハンダクラックしやすいです。

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下の写真は電圧レギュレータ IC で手で触れないほど発熱します。
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IC のリードは自身の発熱に晒されてハンダ付け部分が劣化してハンダクラックしやすいです。

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修理
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上記で説明したハンダ付け部分を補修ハンダ付けしました。
アンテナ端子はハンダクラックしていました。
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これでまた10年以上は大丈夫です。
リペア (その3):[POWER] スイッチ以外のスイッチを押してもラッチしない
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調査
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原因は判明しており、フロントパネルが傾いてスイッチトップをラッチするまで押すことができないためです。
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フロントパネルを外して確認すると、内部のサブパネルが大きく歪んでいました。
相当大きな力が加わったようです。
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修理
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歪んだサブパネルを大型ペンチを使って補修しました。
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修理後の動作チェック
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一旦歪んだサブパネルの鉄板は補修しても、完全に元に戻る訳ではありません。
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少し深く押す必要がありますが、なんとか全てのスイッチが奥側でラッチできるようになりました。
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到着時に天板が取り外し難かったのですが、原因は同じで、補修後は天板の取り付け・取り外しがスムーズになりました。
再調整
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電源電圧チェック (VP)
| VP |
標準電圧 |
実測電圧 |
判定 |
備考 |
| IC601-OUT |
+12V |
+11.2V |
〇 |
FS7812M |
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FM/AM 受信部の調整
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調整結果
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FM 受信
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フロントエンドの RF トラッキング調整がズレていました。
再調整で感度が少し上がりました。
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SUB 調整が大きくズレていました。
再調整で規定内に入りました。
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ステレオセパレーションなどは以下のように問題ありません。
| 項目 |
stereo/mono |
L |
R |
単位 |
| ステレオセパレーション (1kHz) |
stereo |
45 |
46 |
dB |
| 高調波歪率 (1kHz) |
mono |
0.035 |
% |
| stereo |
0.045 |
% |
| パイロット信号キャリアリーク |
stereo |
-69 |
-70 |
dB |
| オーディオ出力レベル偏差 (1kHz) |
mono |
0 |
-0.16 |
dB |
| rec level check |
mono |
445 |
Hz |
| -9.1 |
dB |
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AM 受信
使ってみました
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修理&再調整が終わって
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ST-8077 (1号機)
は電解コンデンサの液漏れで基板が腐食して、修理に手間がかかりました。
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本機も多数の電解コンデンサで液漏れしていたので、基板の腐食を心配しました。
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ところが、ラッキーなことに基板の腐食は無かったです。
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代わりにフロントパネルが傾いているという考えられない変形がありました。
これには苦労しました。
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デザイン
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非常に高さが低くスリム感のある子気味良い素敵なデザインです。
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なお、高さが低い (53mm) だけで横幅はフルサイズ (450mm) あります。
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フロントパネルはアルミ材で厚みが 5mm もあって質感があります。
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指針やインディケータは LED です。
チューニングノブは小さくオシャレです。
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黒のバックに極細の光る指針が緻密な感じがします。
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感度や音質
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FM は4連バリコン式で十分な性能と感度があります。
音質は聴き疲れのしないソフトな音です。
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AM も性能十分です。
音はナローです。