TRIO KT-1000 (5号機) が到着
2024年1月7日、佐賀県三養基郡の T さんより
TRIO KT-1000
の修理依頼品が届きました。
程度&動作チェック
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修理依頼者のコメント
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外観
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製造シリアル番号は [10620136] で、電源コードの製造マーキングより [1980年製造品] とわかりました。
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[純正 AM ループアンテナ] は添付されていませんでした。
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全体的には並み以下の中古状態です。
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プラスチック製のフロントパネルの天板側にかなり目立つ塗装ハゲなどがあります。
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天板に汚れやスレがあります。
ダイヤル内部が煤状の汚れで曇っています。
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電源 ON してチェック
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ランプが切れはなく、スイッチもそれなりに動作します。
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[S メータ] が故障しており、指針がレベル3くらいの所で止まったままになります。
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この時はフロントパネルの上を叩くと一時的に直ります。
指針の動きが悪いようです。
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FM 受信
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感度はかなり悪く、83MHz 以上の放送が全く受信できません。
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受信はできても、一部の放送で混信があります。
比較的受信良好の放送では [STEREO] ランプが点灯します。
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以上より、主に FM フロントエンドの調整がズレていると思います。
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[FM REC CAL] スイッチを ON で正常にテスト音が出ます。
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AM 受信
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手持ちの [純正ではないループアンテナ] をつないでチェックしました。
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感度は落ちていてやや周波数ズレしていますが、正常に受信できます。
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[S メータ] はマトモそうに振れ、[T メータ] の動きもズレはありそうですがまあまあ正常です。
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カバーを開けてチェック
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ゴミはなく、基板などは綺麗な状態です。
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バリコンギア機構のプーリー軸の固定が外れています。
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右の写真の赤〇で囲んだ軸に隙間が見えますが、隙間がないのが正しいです。
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この隙間が大きくなると、同調時のバックラッシュが大きくなります。
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最悪、プーリー軸が脱落するとギアがバラバラに外れて修理不能になります。
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バリコン軸のアース接触部分に緑青錆が出ています。
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悪化すると [TUNING] ノブを回すと雑音が出たり、感度が低下します。
リペア (その1):[S メータ] が故障して指針がレベル3くらいの所で止まったまま
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調査
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最前面のフロントガラスを外して [S メータ] の機構部を眺めてみました。
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ムービングコイル枠の辺りに緑青サビが出ており、これが指針の動きを悪くしていました。
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結論
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メータは精密構造になっており、分解ができません。
[S メータ] は修理不可と判定しました。
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[S メータ] の振れに問題あっても性能には影響しませんので、諦めてください。
リペア (その2):感度がかなり悪い
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調査
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原因は FM OSC トリマコンデンサが完全故障しているためでした。
回しても容量変化がありません。
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トリマコンデンサを交換するためには、FM フロントエンドユニットをメイン基板から一旦取り外す必要があります。
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ところが構造的に大仕事になりそうです。
作業でメイン基板を痛める心配もあります。
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そこで、新しいトリマコンデンサを外付けして修理することにします。
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修理
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フロントエンド基板に乗っていた故障したトリマコンデンサを精密ニッパで切り取り除去しました。
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代わりに写真のように、外付けで新しいトリマコンデンサをバリコンの活栓側とグランドに取り付けました。
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トリマコンデンサにはホット側とコールド側があるので、コールド側が GND になるようにします。
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仮調整して感度がグーンと上がりました。
直りました。
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一部の放送で混信する現象も同時に直りました。
リペア (その3):バリコンギア機構のプーリー軸の脱落防止対策
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バリコンギア機構のプーリー軸の固定が外れている
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放置するとプーリー軸が脱落し、ギア機構がバラバラになります。
こうなると修復不可になります。
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どうやって固定しているのか不明なので、バリコンメーカでないと直せないです。
でもメーカ対応していません。
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そこで、プーリー軸が脱落しない対策をします。
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対策
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[側板]~[プーリー] の間に [特注アクリル板] (50×50×5mm) を挿入して、側板から押さえ込んで脱落防止します。
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筆者のところでは厚みの違う複数の [特注アクリル板] を常備しており、機種により選んでいます。
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左の写真のように [特注アクリル板] を右側板にボンドで接着してから、右の写真のように組み立てます。

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見事に対策できました!!!
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側板から [特注アクリル板] を介してプーリー軸を押しているので、もう脱落する心配は不要です。
リペア (その4):バリコン軸のアース接触部分に緑青錆が出ている
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本機は半世紀ビンテージです。
バリコン軸の接触回復は必須です。
以下の作業をしました。
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エレクトロニッククリーナ
を軸受けに噴射し何度もバリコン羽を動かすと緑青サビが湧き出てきます。
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湧き出た緑青サビを爪楊枝で丹念に落とします。
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[1] と [2] を何度も何度も繰り返します。
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仕上げに、軸受けに
CRC5-56
を塗布して防錆処置します。
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大量の緑青サビが除去できました。
リペア (その5):その他
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ダイヤル内部が煤状の汚れで曇っている
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[S メータ] 不具合調査の時に最前面のフロントガラスを外したので、ついでに、できる範囲で清掃しました。
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死んだ虫さんが出てきました。
ビックリです。
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以前よりは綺麗になりました。
再調整
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電圧チェック (VP)
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測定結果は以下です。
良好です。
| VP |
標準値 |
実測値 |
判定 |
| R260 (100Ω) 左側 |
+14V |
+13.2V |
〇 |
| R261 (100Ω) 左側 |
-14V |
-13.3V |
〇 |
| D25 左側 |
+9V |
+9.10V |
〇 |
| D24 左側 |
-9V |
-9.21V |
〇 |
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FM/AM 受信部の再調整
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調整結果
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以下のように非常に良好な性能に調整でき、音質もアップしました。
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フロントエンドのトラッキング調整にて周波数ズレは ±0.1MHz に収まりました。
| 項目 |
IF BAND |
MONO/STEREO |
L |
R |
単位 |
| ステレオセパレーション (1kHz) |
WIDE |
STEREO |
70 |
70 |
dB |
| NARROW |
54 |
56 |
dB |
| 高調波歪率 (1kHz) |
WIDE |
MONO |
0.018 |
% |
| STEREO |
0.018 |
% |
| NARROW |
MONO |
0.055 |
% |
| STEREO |
0.055 |
% |
| パイロット信号キャリアリーク |
WIDE |
STEREO |
-79 |
-77 |
dB |
| オーディオ出力レベル偏差 |
WIDE |
MONO |
0 |
+0.06 |
dB |
| FM REC CAL 信号 |
WIDE |
MONO |
549.1 |
Hz |
| -6.0 |
dB |
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AM は、[純正 AM ループアンテナ] の添付がなかったので、IF 調整だけ実施しました。
使ってみました
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修理が終わって
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当方に到着した時はボロボロの性能でしたが、修理と調整で見違えるほどの優秀機に復活しました。
この個体の性能は一級品とわかりました。
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この性能なので、外観が悪いのと [S メータ] が故障しているのが残念です。
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感度や音質
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FM は TRIO らしい高解像度でカチッとした高音質です。
感度も良いです。
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やはり、パルスカウント検波の音はイイと思います。
独特です。
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AM は高感度で S/N が高いです。
WIDE 時は高音の伸びた良い音が出ます。
でも、本機のような高音質 FM チューナで低音質な AM 放送を聴く人はいるのだろうか???