TRiO KT-1100 (9号機) が到着
2026年5月11日、北海道茅部郡の T さんより
TRiO KT-1100
の修理依頼品が到着しました。
パルスカウント検波
が特長のチューナです。
程度&動作チェック
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修理依頼者のコメント
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外観のチェック
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製造シリアル番号は [30702734] で、電源コードの製造マーキングより [1983年製造品] とわかりました。
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外観は全体的に汚れやキズ等が多数あり実用品レベルです。
[純正 AM ループアンテナ] の添付はありませんでした。
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リアパネルにある AM ループアンテナを設置するプラスチックホルダが割れて壊れています。
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リアパネルの端子類にはややクスミがあります。
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電源 ON してチェック
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電源は問題なく入り、メータ照明ランプ切れはありません。
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各スイッチやボリュームは動作します。
[FM REC CAL] ボタン ON で正常にテスト音が出ます。
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FM 受信
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初めて電源 ON した時は、[S メータ] [T メータ] が正常に振れ、[STEREO] ランプも点灯して正常音が出ていました。
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しばらく通電したままにしておいたら、音にジャリジャリという雑音が混じるようになりました。
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使用はできますが、チューニングでバックラッシュがやや大きいと感じます。
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サーボロック動作は正常で [SERVO LOCK] ランプも点灯します。
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AM 受信
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[純正 AM ループアンテナ] の添付がなかったので、右の写真の筆者が標準にしているループアンテナを接続してチェックしました。
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SONY ST-SA5ES などの大型ループアンテナです。
中古市場によく出ています。
横幅 28cm、高さ 12cm くらいのサイズです。
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使用はできますが、チューニングでバックラッシュがやや大きいと感じます。
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+30kHz 程度の周波数ズレがあります。
810kHz の放送を 840kHz の指針位置で受信します。
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[S メータ] の振れが少なく感度落ちしています。
[S メータ] のピークと [T メータ] のセンタが合いません。
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カバーを開けてチェック
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内部にやや綿ボコリが見えます。
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基板には目視で明らかに劣化とわかる部品は見当たりません。
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バリコン軸に緑青サビが出ています。
対策が必要です。
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右の写真のように、バリコンギア機構のプーリー軸が外れかかっています。
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今にもプーリー軸が脱落しそうで、プーリー全体が歪んでいます。
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写真の赤〇のところに隙間が見えますが、隙間がないのが正しいです。
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プーリーはギアと接着されていますが、これが外れたのです。
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手でプーリーを左側に押し込んだら、これまであった FM/AM のバックラッシュが一時的に直りました。
これが原因だったのです。
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プーリー軸が脱落すると修理不能になります。
対策が必要です。
リペア (その1):FM 放送音にジャリジャリという雑音が入る
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調査と原因
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雑音が出ていても [S メータ] [T メータ] は正常で [STEREO] ランプが点灯という状況から考えられることは以下です。
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[S メータ] [T メータ] は正常ということは [FM フロントエンド] [IF 増幅部] までは正常です。
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MULTIPATH-H に検波出力が出ており、ここには既に雑音が入っていたので、パルスカウント検波周りの故障です。
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パルスカウント検波周りで雑音が出る可能性があるのは、左の写真の [L6] [L10] [L20] のどれかです。
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[L6] は 2nd OSC 同調コイルで、8.74MHz で発振します。
[1st IF 10.7MHz] - 8.74MHz = [2nd IF 1.96MHz]
となるのです。
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[L20] は 2nd IF (1.96MHz) の BPF です。
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[L10] はパルスカウント検波後の BBF (アンチバーディフィルタ) です。
(BBF = Birdy Beat Filter か?、確信なし)
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[L6] の故障であれば雑音だけになるはずで、これではなさそうです。
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[L10] [L20] の故障であればバリバリ雑音と一緒に放送音は聴こえるはずで、今回はこれに該当します。
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(2nd IF)→[L20]→[TR4011]→[L10]→(MPX) の信号ルートとなっているので、ここを調査しました。
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[TR4011] 出力 (TR4011-5pin) には雑音が出ていませんでした。
こうなると
[L10] 故障確定
です。
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右の写真は基板から取り外した [L10] です。

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左の写真は [L10] の裏側で、チクワの形をしたチタコンが4個とも真っ黒になっています。
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黒ずみは
マイグレーション
です。
金属カビのようなもので、チタコンの両端をレアショートさせます。
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マイグレーションによるレアショートは不安定で、短絡と自然回復を繰り返します。
これが雑音として聞こえるのです。

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修理
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[L10] からチタコン×4個を除去してから基板に戻しました。
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上の右の写真のように、チタコンの代わりにセラミックコンデンサを基板の裏側で [L10] に取り付けました。
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左から順に [2200pF] [330pF] [1000pF] [1500pF] です。
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修理後の動作チェック
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[STEREO] ランプが点灯し雑音のない綺麗な音が出ることを確認しました。
リペア (その2):バリコン軸に緑青サビが出ている
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概要
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サビは絶縁物なので接触不良となり、バリコンの容量が不安定になります。
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指針を動かすとゴソゴソという雑音が出たり、感度が落ちたり、受信が不安定になったりします。
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修理
以下のようにバリコン軸の接触回復作業をしました
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エレクトロニッククリーナ
を軸受けに噴射し何度もバリコン羽を動かすと緑青サビが湧き出てきます。
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湧き出た緑青サビを 爪楊枝/歯間ブラシ/歯間糸楊枝 を使って丹念に落とします。
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[1] と [2] を何度も何度も繰り返します。
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接点復活スプレー
を軸受けに少量吹きかけ馴染ませます。
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仕上げに、軸受けにリチウムグリスを塗布して防錆処置します。
作業の様子
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左の写真は作業前で、バリコン軸と軸受プレートに緑青サビが出ています。
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右の写真は作業中で、サビ落としでこんなにも緑青サビがボロボロ落ちました。
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全ての軸受にこの作業をして大量の緑青サビが除去でき、結構手間がかかりましたが回復しました。

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修理後の動作チェック
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チューニング操作をして雑音が出たり動作が不安定にならないことを確認しました。
リペア (その3):ハンダクラック予防補修
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ハンダクラックしやすい箇所
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左の写真は RCA 端子裏側で、リードが直接基板にハンダ付けされています。
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このハンダ付け部分にはリアパネルと基板の2方向から常にストレスが掛かっているのでハンダクラックしやすいです。
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右の写真は放熱器が取り付けられたパワートランジタで、リードが直接基板にハンダ付けされています。
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このハンダ付け部分にはパワートランジスタ自身が発する高熱が掛かるのでハンダクラックしやすいです。

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修理
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修理後の動作チェック
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RCA 端子に挿入したプラグを揺すっても音が途切れることがないことを確認しました。
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パワートランジスタ周辺をハンマリングして異常が発生しないことを確認しました。
リペア (その4):バリコンギア機構のプーリー軸が外れかかっている
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概要
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バリコンギア機構のプーリー軸の固定が外れたのです。
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どうやって固定しているのか不明なので、バリコンメーカでないと直せないです。
でもメーカ対応していません。
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放置するとプーリー軸が脱落し、ギア機構がバラバラになります。
こうなると修復不能になります。
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そこで、プーリー軸が脱落しない対策をします。
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修理
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まずは、左の写真のようにプーリーの留め位置を左に少しズラして、プーリー軸の先端が最先端になるようにします。
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[側板]~[プーリー軸先端] の間に [特注アクリル板] を挿入して、側板から押さえ込んで脱落防止します。
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寸法測定すると [側板]~[プーリー軸先端] の間隔が 8mm 程度でした。
これより、7mm 厚が適合するとわかりました。
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当方で常備している [特注アクリル板] の [50×50×5mm] [50×50×2mm] を貼り合わせて 7mm 厚として使いました。
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これを右の写真のように右側板内側にボンドで接着しました。
[プーリー軸] と [特注アクリル板] の中央が合う位置です。
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天板 (側板) を被せて完成です。
天板を被せた状態ではプーリー軸脱落の心配はありません。

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修理後の動作チェック
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[TUNING] ノブを回してもバックラッシュが発生せず、指針がスムーズに動くことを確認しました。
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コメント
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天板を外したらプーリー軸が脱落しないよう注意ください。
脱落させてしまうと修理不能になります!
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天板を被せる際は、プーリー軸を手で押し込んでから天板を取り付けます。
リペア (その5):その他
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AM 受信で [S メータ] のピークと [T メータ] のセンタが合わない
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原因は AM 受信時の [T メータ] センタ調整ズレです。
[VR11] を再調整して直りました。
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RCA 端子にクスミがある
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ピカール液
を使って RCA 端子をマイクロ研磨して輝きが少し出ました。
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防錆処置として、RCA 端子に
CRC5-56
を僅かに塗布しました。
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更に RCA 端子に防塵キャップを被せました。
空気に直接触れることがなくなるのでサビを防止できます。
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AM 受信で +30kHz 程度の周波数ズレがある
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後述の AM フロントエンドのトラッキング調整で直りました。
リペア (その6):FM 受信でザーという雑音だけになる
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概要
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リペア (その1)~(その5) を終えて通電したままのエージングをしました。
ずっと綺麗な放送音が出ていました。
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ところが、通電後5時間くらいで、突然ザーという雑音だけになりました。
リペア (その1) と別の原因です。
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やれやれ、本機は疲れる個体です。
逆に修理後のエージング稼働は意義があると思いました。
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調査と原因
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[S メータ] [T メータ] は正常、[STEREO] ランプは点滅、雑音だけになるという状況から考えられることは以下です。
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[S メータ] [T メータ] は正常ということは [FM フロントエンド] [IF 増幅部] までは正常です。
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MULTIPATH-H に検波出力が出ており、ここには既に雑音が入っていたので、パルスカウント検波周りの故障です。
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パルスカウント検波周りで雑音が出る可能性があるのは、左の写真の [L6] [L10] [L20] のどれかです。
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[L6] は 2nd OSC 同調コイルで、8.74MHz で発振します。
[1st IF 10.7MHz] - 8.74MHz = [2nd IF 1.96MHz]
となるのです。
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[L20] は 2nd IF (1.96MHz) の BPF です。
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[L10] は既に修理済みで、これではないです。
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[L6] の故障であれば雑音だけになるはずで、今回はこれに該当します。
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[L6] を手で触って温めると雑音が出て、冷やすと雑音が消えると確認しました。
[L6] の不具合に間違いないです。
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右の写真は基板から取り外した [L6] です。

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左の写真は [L6] の裏側で、チクワの形をしたチタコンが真っ黒になっています。
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黒ずみは
マイグレーション
です。
金属カビのようなもので、チタコンの両端をレアショートさせます。
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マイグレーションによるレアショートは不安定で、短絡と自然回復を繰り返します。
これが雑音として聞こえるのです。

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修理
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[L6] からチタコンを除去してから基板に戻しました。
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上の右の写真のように、チタコンの代わりにセラミックコンデンサ 100pF を基板の裏側で [L6] に取り付けました。
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修理後の動作チェック
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[STEREO] ランプが点灯し雑音のない綺麗な音が出ることを確認しました。
再調整
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電圧チェック (VP)
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実測値は以下のように良好でした。
| VP |
標準値 |
実測値 |
判定 |
| Q19-E |
+13V |
+13.3V |
〇 |
| Q20-E |
-13V |
-13.3V |
〇 |
| Q23-E |
+7V |
+6.97V |
〇 |
| Q24-E |
-7V |
-7.01V |
〇 |
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FM/AM 受信部の調整
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調整結果
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FM 受信
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FM フロントエンドのトラッキング調整が大きくズレていました。
再調整で感度が3倍以上上がりました。
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[L6] のチタコンを交換したので 2nd IF 周波数調整をやり直しました。
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ステレオセパレーションや高調波歪率などは以下の素晴らしい性能が出ました。
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IF BAND = WIDE/NARROW で高調波歪率が1桁違うので、できるだけ WIDE で使ったほうが良いです。
| 項目 |
IF BAND |
stereo/mono |
L |
R |
単位 |
| ステレオセパレーション (1kHz) |
WIDE |
stereo |
64 |
70 |
dB |
| NARROW |
43 |
45 |
dB |
| 高調波歪率 (1kHz) |
WIDE |
mono |
0.017 |
% |
| stereo |
0.018 |
% |
| NARROW |
mono |
0.43 |
% |
| stereo |
0.44 |
% |
| パイロット信号キャリアリーク |
WIDE |
stereo |
-79 |
-84 |
dB |
| オーディオ出力レベル偏差 |
WIDE |
mono |
0 |
-0.19 |
dB |
| FM REC CAL 信号 |
WIDE |
mono |
422 |
Hz |
| -6.0 |
dB |
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AM 受信
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+30kHz 程度の周波数ズレがありましたが、AM フロントエンドのトラッキング調整で直りました。
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トラッキング調整するには [純正 AM ループアンテナ] が必要ですが、これの添付がありませんでした。
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やむを得ず [SONY ST-SA5ES AM ループアンテナ] で最高感度になるように調整しています。
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従って [SONY ST-SA5ES AM ループアンテナ] 以外のループアンテナでは最高感度になりません。
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本機は AM 3連バリコン式のため、さすが感度が良いです。
音も良いです。
使ってみました
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修理&再調整が終わって
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本機の修理が全部終わったと思ってエージングしている最中に新たな不具合が出ました。
疲れる個体でした。
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雑音が出る原因が複数あったという、ほとんどあり得ない状況でした。
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でも、私の所にある間に不具合が出て良かったです。
不具合が潜在したまま返却するところでした。
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デザイン
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デザインが巧妙で高級感があります。
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フロントパネルはアルミヘアライン仕上げです。
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チューニングノブは直径 46mm の無垢アルミです。
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ダイヤルスケールは正面を向いており照明はありません。
ダイヤル指針が赤い LED 表示で見易く精密感があります。
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感度や音質
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FM の感度は良く、TRiO らしい高解像度でカチッとした高音質です。
やはり、パルスカウント検波の音は良いです。
別格です。
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AM は高感度で S/N が高いです。
WIDE/NARROW 切り換えが有効で、WIDE 時はかなり高音が出て高音質です。