ワイド FM 対応クリコンの製作

背景と概要

1. 最近の FM チューナにはロクな製品がない
   
   
   • FM チューナ全盛期のエントリクラス並み性能しかないのに、値段は全盛期並みで、とても買えません。
     
     
   • 唯一、 Accuphase 社 だけがマトモで高性能な FM チューナを発売しています。 でも、お値段が高い！！！
     
     
   • 中古で全盛期の頃のビンテージ FM チューナを買ったほうが満足度が高いです。
     
     
2. ビンテージ FM チューナでは ワイド FM が受信できない
   
   
   • ビンテージ FM チューナが現役で販売されていた頃には ワイド FM が無かったので当然です。
     
     
   • メジャーな 76～90MHz の周波数しか受信できません。 ワイド FM の 90～95MHz を受信できないのです。
     
     
3. ビンテージ FM チューナで ワイド FM を受信したい！！！
   
   
   • そこで、ここでは水晶発振子を使ったクリコン (Crystal Frequency Converter) を製作します。
     
     
   • 1から作るのは大変なので、amazon で販売されているカーラジオ用のクリコンを改造して目的を達成します。
     
     

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Spidekng T-3X

1. 2024年3月6日、amazon で FM Convertor の Spidekng T-3X が送料税込1,640円でした
   
   
   • これがベースになるカーラジオ用クリコンです。 [Convertor] とありますが、[Converter] と書くほうが一般的です。
     
     
   • 大きさは 63×24.9×25.4mm で小さいです。 アルミケースに入っているのでシールド性は良好です。
     
     
   • 黒い線にあるプラグをカーラジオに挿入し、右の写真の穴にはアンテナのプラグを挿入します。
     
     
   • 黄色の電線には自動車の DC12V を供給します。
     
     
   • 電線が出ている側にはスライドスイッチがあって周波数変換ベースを 16/18/20MHz に切換できます。
     
     
     • 写真の方向から見た場合、左から順に 20/18/16 です。
       
       
     　
     
     
2. Spidekng FM Convertor の本来の使い方
   
   
   • 海外で自動車を買って日本に持ち込むと、当然、カーラジオの受信周波数は 88～108MHz なので、日本でラジオが受信できません。
     
     
   • [Spidekng FM Convertor] をカーラジオとアンテナの間に挿入すると、以下のように周波数変換してくれます。
     
     

     周波数変換ベース (MHz)	元の周波数 (MHz)	変換後の周波数 (MHz)	備考
     16	76～90	92～106	元の周波数に周波数変換ベースを 足した周波数になる
     18		94～108
     20		96～110

     
     
   • [Spidekng FM Convertor] はアップコンバータとして動作し、海外仕様のカーラジオで日本の FM 放送が受信できるのです。
     
     
     • 例えば、周波数変換ベースを 16MHz にした場合、80MHz の放送は 96MHz で受信できます。
       
       
     • ただし、周波数変換ベースを 16MHz にしても、ワイド FM は 90～92MHz の一部しか受信できません。
       
       
3. Spidekng FM Convertor の中身
   
   
   • 下の写真は内蔵基板の表と裏です。 それぞれの写真をクリックすると大きな写真が表示できます。
     
     　
     
     
   • 基板は両面パターンでスルーホールになっており、作りはマトモです。
     
     
4. Spidekng FM Convertor の回路図
   
   
   • 部品点数は少ないので、ちょちょっと基板パターンから回路図化してみました。
     
     
     
     
   • 以下の IC が実装されており、この IC で全ての機能を実現しています。
     
     
     • マトモな IC なので、[Spidekng FM Convertor] もマトモと言えます。
       
       

     メーカ	IC 型式	機能
     NXP	SA602A	Double-balanced mixer and oscillator

     
     
   • [D1] のツェナーダイオードで回路は 7.5V で動作しているので、DC9V 以上の電圧供給で動作します。
     
     
   • 出力側にフィルタが入っていないので、アップコンバータとしてもダウンコンバータとしても動作します。
     
     
   • [L2] [C4] で構成する BPF で入出力をスルーしています。
     
     
     • AM バンドの電波をスルーする BPF です。 [C4] はおそらく 2000pF くらいと思います。
       
       
     • カーラジオではロッドアンテナで FM/AM とも受信するので、この BPF がないと AM 放送を受信できません。
       
       
     • お奨めはしませんが、[L2] を 10～100pF くらいのコンデンサに置き換えると、FM 放送の元の周波数もスルーできます。
       
       

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ワイド FM 対応クリコンの製作 (改造)

1. 改造後の回路図
   
   
   • パッと見て何が変わったのかわからないと思いますが、[X1] [X2] の水晶発振子を変えただけです。
     
     
   • [X1] を 12MHz に、[X2] を 14MHz にしました。 [X3] の 16MHz はそのままです。
     
     
     
     
2. 改造後の動作仕様
   
   
   • ダウンコンバータ/アップコンバータのいずれにも使えます。 以下の使い方を想定しています。
     
     

     周波数変換ベース (MHz)	元の周波数 (MHz)	変換後の周波数 (MHz)	備考
     12	76～95	88～107	アップコンバータとして動作 ワイド FM も受信できる
     14	90～95	76～81	ダウンコンバータとして動作 今回の目的動作
     16	76～90	92～106	アップコンバータとして動作 ワイド FM はサポート外

     
     
   • 周波数変換ベースの 16MHz はオマケです。 水晶発振子を特に取り外す必要もないし。
     
     
   • 周波数変換ベースの 12MHz は海外で買ったラジオ (88～108MHz 仕様) を日本で使いたい場合に便利かな。
     
     
3. 改造しました
   
   
   • 今回の改造では、端子交換が主体になります。 ビンテージ FM チューナで使うのに便利になるようにしました。
     
     
     • まずは、元付いていたカーラジオ用入出力端子と電源ケーブルを取り外し、基板だけの状態にしました。
       
       
     • 入出力端子を F 端子にし、屋内で使えるように電源は AC アダプタから供給するようにしました。
       
       
   • 左の写真が完成です。 マトモな仕上がりでしょ。
     
     
   • 右の写真のように、入力を F 端子メスのシャーシ取付タイプにしました。
     
     
     • F 端子は中央より少し上側にしないと基板に干渉するので、片面プリント板を加工して取付板を製作しました。
       
       
     • 写真の裏側は銅箔面なので、シルード性も保てます。 材質はベークなので、加工は簡単です。
       
       
     　
     
     
   • 左の写真は端子類です。
     
     
     • 出力は F 端子オス付きケーブルにしました。
       
       
     • 電源入力端子は 5.5/2.1mm メスの標準型にしました。 センタプラスで DC9～15V の AC アダプタに対応します。
       
       
     • トランス型の AC アダプタを使ったほうがノイズの点で安心です。 この場合、DC9～12V が良いです。
       
       
   • ケーブルが出ている側の取付板は2分割になっており完全に外せるので、右の写真のように分解できます。
     
     
     • この構造のおかげでメンテナンス性は良いです。 部品の交換もできます。
       
       
       • 写真に写っている青色のケースも完全に取り外しできます。
         
         
     • F 端子メスは外装部分をプリント板にハンダ付けしているので緩むことはないです。
       
       
       • 更に銅箔面に PC ボードプロテクタ でコーティングして防錆処置をしています。
         
         
       • F 端子メスと基板とは数 cm 程度なので、同軸ではなく耐熱電線をよじってシールド性を持たせて接続しています。
         
         
     • ケーブルが出ている側の取付板にも PC ボードプロテクタ でコーティングして防錆処置をしています。
       
       
     　
     
     

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使ってみました

1. アンテナ周りの配線
   
   
   • FM チューナには SONY ST-S333ESA を使いました。
     
     
     • アンテナ端子が A/B の2つあって、プリセットにその A/B も一緒に記憶できるので好都合なのです。
       
       
   • 製作した [FM クリコン] の [周波数変換ベース = 14MHz] に設定して、以下のように配線します。
     
     
     
     
2. ST-S333ESA のプリセット登録
   
   
   • 以下のようにプリセットしました。
     
     

     プリセット番号	プリセット内容		放送局名	備考
     	ANT	周波数 (MHz)		元の周波数 (MHz)	種別
     A1	A	79.5	NACK5	79.5	メジャー FM
     A2	A	80.0	TOKYO FM	80.0
     A3	A	81.3	J-WAVE	81.3
     A4	A	85.1	NHK FM	85.1
     A5	A	86.8	越谷 FM	86.8
     A6	A	89.7	interFM	89.7
     A7	B	76.5	TBS ラジオ	90.5	ワイド FM
     A8	B	77.6	文化放送	91.6
     A9	B	79.0	ニッポン放送	93.0
     A0	B	80.6	茨城放送	94.6

     
     
3. FM 放送を受信してみました
   
   
   • プリセットボタンを押すと [メジャー FM 放送] [ワイド FM 放送] がスムーズに切り換わり、良好に受信できました。
     
     
     • 感度や音質も良好です。 周波数を変換しているだけですからね。
       
       
   • 今まで ST-S333ESA のアンテナ端子が2つあってもアンテナが1つだったので使いようがなかったのですが ・・・
     
     
     • [FM クリコン] で余っていたアンテナ端子が使えて嬉しいです。 なんとなく、得した気分だ！
       
       
   • FM 放送局が4つ増えたのと同じです。 素晴らしい！！！
     
     

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