KENWOOD KT-1100D (11号機) が到着
2026年6月7日、長野県安曇野市の M さんより
KENWOOD KT-1100D
の修理依頼品が到着しました。
定価7.5万円
の高級シンセサイザ式 FM/AM チューナです。
程度&動作チェック
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修理依頼者者のコメント
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手持ちの KT-7020 と比べて「感度が悪い」「ステレオ不足」の状態です。
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アンテナ端子が破損して外れて筐体内に転がっていました。
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自力で治しましたが、素人修理なので、すぐに取れてしまう可能性があります。
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以上の部分のチェック&修理をお願いします。
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外観のチェック
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製造シリアル番号は [10600106] で、電源コードの製造マーキングが見当たらず、ここからは製造年がわかりません。
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[純正 AM ループアンテナ] は付属していませんでした。
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FM アンテナ端子が壊れて陥没していました。
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これではチェックできないので、急遽、手持ちの全く同じアンテナ端子と交換しました。
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詳しくは「リペア (その1)」を参照ください。
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多少のスレや汚れはありますが致命的な損傷はなく、全体的にはそこそこ綺麗です。
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フロントパネルの右上エッジ ([TUNING] ノブの上) に2箇所小さいキズがあります。
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リアパネルは綺麗で、RCA 端子には輝きがあります。
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天板にはあちこち薄いスレがありますが綺麗なほうです。
底板は特に問題ないです。
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電源 ON して動作チェック
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電源は入り、[TUNING] ノブや操作ボタンは正常に反応します。
[REC CAL] ボタンでテスト音が出ます。
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ディスプレイの輝度は新品同様に明るいです。
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FM 受信
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(筆者の環境では) S メータがフルに振れ、[STEREO] 表示が出てステレオ感を感じます。
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AUTO TUNING してみると・・・
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インクリメント方向に AUTO TUNING すると -0.1MHz ズレた周波数 (80MHz の放送なら 79.9MHz) でストップします。
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デクリメント方向に AUTO TUNING すると放送局の正しい周波数でストップします。
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以上より周波数ズレしかかっています。
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大きな問題はないので、修理依頼者のいう「ステレオ不足」を確認するため、主な性能を計測してみました。
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S メータがフルになる電波レベルは 61dB で、そう感度落ちしていないです。
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ステレオセパレーションはやや低いですが十分ステレオ感を感じる値です。
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この数値で「ステレオ不足」と感じるなら修理依頼者の耳はかなり良いのでしょう。
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[高調波歪率] [パイロット信号キャリアリーク] は良好です。
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以上より、まだまだ良好な範囲と言えます。
| 項目 |
FM IF BAND |
stereo/mono |
L |
R |
単位 |
| ステレオセパレーション (1kHz) |
WIDE |
stereo |
41 |
45 |
dB |
| 高調波歪率 (1kHz) |
WIDE |
mono |
0.023 |
% |
| stereo |
0.023 |
% |
| パイロット信号キャリアリーク |
WIDE |
stereo |
-72 |
-67 |
dB |
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AM 受信
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[純正 AM ループアンテナ] が付属していなかったので、右の写真の筆者が標準にしているループアンテナを接続してチェックしました。
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SONY ST-SA5ES などの大型ループアンテナです。
中古市場によく出ています。
横幅 28cm、高さ 12cm くらいのサイズです。
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このアンテナとの相性は良く S メータが振れて良好に受信できます。
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AM は問題ないようです。
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カバーを開けてチェック
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使用 IC のロット番号より、本機は [1986年製造品] とわかりました。
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基板は綺麗で、目視で明らかに劣化とわかる部品はないです。
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メモリバックアップ用電気二重層コンデンサ [C178] はそろそろ寿命です。
交換したほうがよいです。
リペア (その1):FM アンテナ端子が壊れて陥没している
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概要
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右の写真のようにコネクタ部分がプラスチック台から外れています。
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本来なら、この2つの部品はシッカリくっついているのです。
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ワンタッチアンテナプラグと勘合する外側部分が変形しています。
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プラスチック台もコネクタ部分取り付け枠が削れています。
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もうこれは直せないので交換が必要です。
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修理
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修理後の動作チェック
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ワンタッチアンテナプラグを抜き差しして良好なことを確認しました。
リペア (その2):[電気二重層コンデンサ] の交換
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概要
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電気二重層コンデンサでプリセットメモリの記憶をバックアップします。
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電気二重層コンデンサは経年劣化するので、最新の容量の大きいものと交換します。
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修理 (交換)
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下のリストのように部品交換しました。
| 部品番号 |
交換前 |
交換後 |
備考 |
| C178 |
18mF/5.5V |
0.22F/5.5V |
電気二重層コンデンサ |
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左の写真は交換前で、橙色の大きな部品が電気二重層コンデンサです。
左の写真は交換後で極端に小さくなりました。

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修理後の動作チェック
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正常にプリセットでき、プリセットコールも正常なことを確認しました。
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電源コードを抜いてもプリセットが消えずに残っていることを確認しました。
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コメント
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電気二重層コンデンサは 18mF → 0.22F と12倍の容量になりました
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取扱説明書によるとメモリバックアップは1週間と書かれています。
(元の 18mF の時です。)
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容量が12倍になったので、計算上は12週間 (3ヶ月) バックアップできるはずですが ・・・
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実際には、電気二重層コンデンサの自己放電もあるので1ヶ月くらいでしょう。
リペア (その3):ハンダクラック補修
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KT-1100D でハンダクラックしやすい箇所
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左の写真は RCA 端子の裏側です
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リードのハンダ付け部分には常にリアパネルと基板の2方向からストレスがかかっており、ハンダクラックしやすいです。
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右の写真で黄枠で囲んだのは電源部のパワートランジスタです。
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リードのハンダ付け部分は自身の発熱でハンダが劣化してハンダクラックしやすいです。

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修理 (補修)
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RCA 端子とパワートランジスタのリードを補修ハンダ付けしました。
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修理後の動作チェック
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RCA 端子に挿入したプラグを揺すっても音が途切れないことを確認しました。
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パワートランジスタをハンマリングしても異常が出ないことを確認しました。
リペア (その4):その他
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フロントパネルの右上エッジ ([TUNING] ノブの上) に2箇所小さいキズがある
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黒の油性マーカーでキズ部分を化粧して目立たなくなりました。
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使っていくうちに化粧は薄くなっていくので、また目立つようになったら再化粧すればよいです。
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化粧ですから誰にでもできます。
失敗したら無水アルコールで化粧を落とすこともできます。
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FM 受信で周波数ズレしかかっている
再調整
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電源電圧チェック (VP)
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実測値は以下のように良好でした。
| VP |
表示電圧 |
標準電圧 |
実測電圧 |
判定 |
| Q40-E |
+15V |
+14.9V |
+14.8V |
〇 |
| Q42-E |
-14V |
-13.5V |
-13.1V |
〇 |
| IC14-OUT |
+5V |
+5.6V |
+5.61V |
〇 |
| Q46-E |
+28V |
+28V |
+28.2V |
〇 |
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FM/AM 受信部の調整
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調整結果
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FM 受信
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FM 同調点電圧が 370mV (正しくは 0V) と大きくズレていました。
再調整で規定内に入りました。
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フロントエンドの RF トラッキング調整が少しズレていました。
再調整で感度が 17dB (7倍) 上がりました。
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MPX SUB 調整がかなりズレていました。
再調整で規定内に入りました。
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再調整でステレオセパレーションと高調波歪率が大きく向上し、ハッとする素晴らしい音になりました。
| 項目 |
FM IF BAND |
stereo/mono |
L |
R |
単位 |
| ステレオセパレーション (1kHz) |
WIDE |
stereo |
70 |
70 |
dB |
| NARROW |
66 |
70 |
dB |
| 高調波歪率 (1kHz) |
WIDE |
mono |
0.0088 |
% |
| stereo |
0.0088 |
% |
| NARROW |
mono |
0.014 |
% |
| stereo |
0.020 |
% |
| パイロット信号キャリアリーク |
WIDE |
stereo |
-80 |
-67 |
dB |
| オーディオ出力レベル偏差 (1kHz) |
WIDE |
mono |
0 |
-0.05 |
dB |
| FM REC CAL 信号 |
WIDE |
mono |
398Hz |
Hz |
| -6.3 |
dB |
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AM 受信
使ってみました
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修理&再調整が終わって
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修理依頼者より「感度が悪い」「ステレオ不足」と聞いていましたが、到着時点ではいずれもギリギリ合格圏内でした。
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しかし、再調整すると「感度は 17dB (7倍) アップ」「ステレオセパレーションは 26dB (20倍) アップ」して音質は格段に上がりました。
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修理依頼者の言う通りでした。
修理依頼者はよほど耳が良いのだろうと思います。
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FM の音質はシャッキとした高音域が特長
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ハッとするような素晴らしくクリアな音
です。
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ソースの持つ質感や雰囲気をうまく表現します。
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AM の音質も良い
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でも、このような高級チューナで AM 聴く人いないような ・・・