SONY ST-S333ESG (26号機) が到着
2026年3月9日、札幌市西区の H さんから
SONY ST-S333ESG
の修理依頼品が到着しました。
程度&動作チェック
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修理依頼者のコメント
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全般動作チェック・調整をお願いします。
必要があれば修理補修もお願いします。
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FM の感度があまり良くないです。
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FM ステレオ受信・表示が不安定だったので IFT251 を微調整しましたが正確に調整できていません
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AM は信号は強いがノイズが少し多いです。
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ノイズは外部起因かもしれませんが、念のためご確認いただければと思います。
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いずれ AM 放送も無くなりますし、調整以上の大掛かりな修理は不要です。
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局メモリ用のスーパーキャパシティを交換し、アースバーにクラックがあったので補修ハンダしました。
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ただし、下手なはんだ付けなので、危なそうなところは補修をお願いします。
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外観のチェック
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まずは SONY ST-S333ESG オリジナルの梱包箱で到着しました。
ワンオーナなのかな?
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製造シリアル番号は [209728] で、電源コードの製造マーキングより [1991年製造品] とわかりました。
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[純正 AM ループアンテナ] が添付されていました。
[リモコン] の添付はありませんでした。
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全体的にはかなり綺麗な逸品です。
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右側サイドウッドの中程下側にヘコミがありますが、まずまず良い状態です。
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フロントパネルが天板へ折り返すエッジでごく小さいキズが1個あります。
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リアパネルの RCA 端子には輝きがあって良い状態です。
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電源 ON してチェック
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RCA 端子の右チャンネルの GND 側が完全にハンダクラックしています。
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右チャンネルだけに RCA プラグを差し込むとハム音が出るのでわかりました。
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問題なく電源 ON でき、FL 表示器の輝度は十分で、各ボタンやノブも正常に反応します。
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[CAL TONE] ボタンでテスト音が正常に出ます。
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FM 受信
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周波数ズレはありませんが、S メータは 50% 程度しか振れず感度落ちしています。
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放送を受信してみると [STEREO] 表示が出て綺麗な音が出ます。
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特に問題は無さそうなので現状の性能値を測定してみました。
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感度落ちはあるものの、現状は特に問題ない性能が出ています。
| 項目 |
IF BAND |
stereo/mono |
L |
R |
単位 |
| ステレオセパレーション (1kHz) |
WIDE |
stereo |
52 |
51 |
dB |
| 高調波歪率 (1kHz) |
WIDE |
mono |
0.025 |
% |
| stereo |
0.025 |
% |
| パイロット信号キャリアリーク |
WIDE |
stereo |
-51 |
-65 |
dB |
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AM 受信
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添付された [純正 AM ループアンテナ] を接続してチェックしました。
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特に問題なく S メータが大きく振れて良好に受信できます。
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修理依頼者は「AM は信号は強いがノイズが少し多い」と言われていますが、そういう感じはしないです。
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AM はそもそも外部から電波として入ってくるノイズに弱いです。
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おそらく、修理依頼者の設置環境の問題と思います。
人里離れた山中に設置すれば雑音は出ないはずです。
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カバーを開けてチェック
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[サイドウッド] が [天板] に貼り付いていました。
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[サイドウッド] に貼られた両面テープの粘着剤が溶けだして [天板] に貼り付いているのです。
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基板は綺麗で、目視で明らかに劣化とわかる部品は見当たりません。
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[C605] 電気二重層コンデンサは 1F/5.5V に交換されていました。
リペア (その1):FM で感度落ちしている
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調査と原因
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FM フロントエンドには3個の RF トリマコンデンサが使われています。
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FM 放送受信中にこれらの RF トリマコンデンサを回してみても S メータの振れが変わらず、3個とも故障しています。
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RF トリマコンデンサの劣化が感度落ちの原因です。
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修理
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トリマコンデンサを3個とも交換しました。
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左の写真が交換後で、赤〇で囲んだのがトリマコンデンサです。
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右の写真はこれまで基板に実装されていた故障したトリマコンデンサです。
底部のハトメ部分が接触不良になるのです。

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修理後の動作チェック
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新しいトリマコンデンサを調整したら S メータの振れがビューンと上がり、(筆者の環境で) フルになりました。
リペア (その2):ハンダクラック対策
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概要
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ST-S333ES シリーズにはハンダクラックしやすい箇所があるという持病があります。
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1つはリアパネルの端子類のハンダ付け部分です。
(左の写真)
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赤□で囲んだのは RCA 端子、黄□で囲んだのは FM/AM アンテナ端子です。
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ここは [リアパネル] [基板] の2方向から常にストレスを受けるのでハンダクラックしやすいのです。
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本機では到着時に RCA 端子の右チャンネルの GND 側が完全にハンダクラックしていました。
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もう1つはアースバーのハンダ付け部分です。
(右の写真)
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基板に細長い銅板が7枚走っていますが、これがアースバーです。
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ここもハンンダクラックしやすいです。
なぜなら、基板とアースバーの熱膨張率が違うからです。

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修理
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リアパネルにある [FM アンテナ端子] [AM アンテナ端子] [RCA 出力端子] のハンダ付け部を補修ハンダ付けしました。
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7本あるアースバーのハンダ付け部 (全部で数10箇所ある) を補修ハンダ付けしました。
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補修ハンダ付けしながら眺めたのですが、数ヵ所は既にハンダ付け部分に亀裂が入っていました。
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修理後の動作確認
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[アースバー] を揺すっても電源が切れたり動作が不安定にならないことを確認しました。
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[FM/AM アンテナ端子] [RCA 出力端子] を揺すっても音が途切れるなどの不具合が出ないことを確認しました。
リペア (その3):その他
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修理依頼者が実施したハンダ付け部のチェック
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「リペア (その2)」の時に一緒にチェックして不具合があった部分はハンダ付けをやり直しました。
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[サイドウッド] が [天板] に貼り付いている
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[サイドウッド] が [天板] に貼り付かないよう、[サイドウッド] にセパレータ板が貼り付けられています。
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セパレータ板は両面テープで貼り付けられています。
この粘着剤が溶け出して [天板] に貼り付いているのです。
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(SONY が) 安易に両面テープ貼りしたために、セパレータ板の役目が果たせなくなったのです。
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粘着剤が溶け出しても [天板] に貼り付かないよう、経年変化しない260℃耐熱ポリイミドテープで養生しました。
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フロントパネルが天板へ折り返すエッジでごく小さいキズが1個あり
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キズはやや目立つのですが小さいです。
そこで塗り補修ではなく化粧補修しました。
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黒のマジックペンでピカッと光ったキズ部分を塗って化粧補修しました。
これだけで見栄えがアップしました。
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使っているうちに化粧が落ちてきたら、また塗ればよいです。
誰でもできます。
再調整
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電源電圧チェック (VP)
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電源回路の修理を終えた実測値は以下のように良好です。
| VP |
表示電圧 |
実測電圧 |
判定 |
備考 |
| JW88 |
+30V |
+30.4V |
〇 |
PLL |
| JW89 |
+15V |
+15.0V |
〇 |
AUDIO |
| JW145 |
-17V |
-17.8V |
〇 |
FL |
| JW213 |
+13V |
+13.5V |
〇 |
DIGITAL |
| JW220 |
+5V |
+5.68V |
〇 |
DIGITAL |
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FM/AM 受信部の調整
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調整結果
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FM 受信部
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同調点電圧は 529mV と周波数ズレする限界までズレていました。
再調整で規定内に入りました。
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フロントエンドのトリマコンデンサを全数交換したので、RF/OSC トラッキング調整をやり直しました。
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PLL 検波で大きな調整ズレがありました。
再調整で規定内に入りました。
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WOIS (IF 歪補正) でかなりズレがありました。
再調整で規定内に入りました。
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再調整でステレオセパレーションが大きく改善して音の解像度が良くなりました。
| 項目 |
IF BAND |
stereo/mono |
L |
R |
単位 |
| ステレオセパレーション (1kHz) |
WIDE |
stereo |
63 |
68 |
dB |
| NARROW |
42 |
43 |
dB |
| 高調波歪率 (1kHz) |
WIDE |
mono |
0.021 |
% |
| stereo |
0.023 |
% |
| NARROW |
mono |
0.11 |
% |
| stereo |
0.11 |
% |
| パイロット信号キャリアリーク |
WIDE |
stereo |
-75 |
-81 |
dB |
| オーディオ出力レベル偏差 (1kHz) |
WIDE |
mono |
0 |
0 |
dB |
| CAL TONE 信号 |
WIDE |
mono |
422 |
Hz |
| -6.2 |
dB |
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AM 受信部
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添付された [純正 AM ループアンテナ] を接続して調整しました。
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OSC トラッキング調整が少しズレていました。
再調整で規定内に入りました。
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RF トラッキング調整が少しズレていました。
再調整で感度が上がりました。
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IF 調整が少しズレていました。
再調整で感度が上がりました。
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残念ながら
AM 放送は2028年に終了
します。
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ワイド FM 対応クリコン
を製作すれば AM 放送をワイド FM で受信できます。
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ST-S333ESG はアンテナ端子が2つあるので、ワイド FM 受信に便利です。
使ってみました
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修理&再調整が終わって
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ST-S333ESG で劣化しやすい部品・箇所が本機でも発生していました。
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特にトリマコンデンサとアースバーは ST-S333ES シリーズの持病です。
大抵故障しています。
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全体的にブラック基調のデザイン
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SONY デザインはやはり格好イイです。
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デザインが良くて性能も良い、持つべき価値があります。
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フロントパネルはアルミ材で、ヘアライン仕上げです。
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FM 受信
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感度も S/N も一級品です。
微弱電波もしっかり捉えます。
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解像度がある素晴らしい音。
現在売られているチューナ (値段は高級機並み) とは全く異次元の音です。
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AM 受信
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感度は良いです。
ループアンテナでしっかり入感します。