SONY ST-S333ESJ (10号機) が到着
2026年4月6日、大阪府豊中市の Y さんより
SONY ST-S333ESJ
の修理依頼品が到着しました。
程度&動作チェック
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修理依頼者のコメント
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10年前に中古で購入しました。
容量抜けしていたのでプリセットメモリ用コンデンサを交換しました。
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最近になって FM 特定の周波数 (78.6, 79.4MHz) でステレオインジケータが不安定、音質悪化 (サー音) になった。
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ひどい時には 音飛びや感度インジケータが不安定にもなります。
(音飛び時に mute が効いている気がする)
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数年前より受信環境が良いのに感度インジケーターがフルにならなくなった。
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以前はフルでした。
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電源投入直後や寒い時は6割程度の感度になり、その後数分~数10分使用し続けると8~9割程度になります。
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また、長期間 (1か月以上) 使用しないと数時間経過しても6割程度のままです。
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外観のチェック
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製造シリアル番号は [251089] で、電源コードの製造マーキングより [1993年製造品] とわかりました。
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天板を上から留めるネジに白っぽいサビが出ていますが、これ以外に指摘するような外観上の問題はなく、綺麗な逸品です。
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[純正 AM ループアンテナ] の添付はありませんでした。
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電源 ON してチェック
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問題なく電源が入り、FL の輝度は新品同様、各ボタン操作も正常です。
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プリセットが全部消えて初期状態になっていました。
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FM 受信
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周波数ズレはなく AUTO TUNING で放送局の正しい周波数でストップします。
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S メータの振れは 90% 程度で、やや感度落ちしているようです。
筆者の環境でアンテナレベルは 80dB 以上なのでフルになるはず。
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[STEREO] 表示が出て正常に放送が受信できました。
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電源 ON してから30分程度で [STEREO] 表示が一瞬消えて、また点灯しました。
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これが修理依頼者のいう「ステレオインジケータが不安定」と思います。
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AM 受信
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[純正 AM ループアンテナ] の添付がなかったので手持ちの [ST-SA5ES 純正ループアンテナ] を接続してチェックしました。
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同じメーカのループアンテナのためか、特に問題なく良好に受信できました。
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カバーを開けてチェック
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筐体内や基板全体にやや綿ボコリが堆積しています。
基板は綺麗で、目視でわかる劣化部品は見当たりません。
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FM 同調点電圧を測定すると 600mV あり、誤動作する限界電圧になっていました。
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これが [STEREO] 表示が点滅する、音が途切れるの原因です。
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FM フロントエンドの RF トリマコンデンサはオリジナルのままでした。
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このタイプのトリマコンデンサは劣化しやすく、これが感度落ちの原因です。
リペア (その1):FM で [STEREO] 表示が不安定
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調査と原因
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修理依頼者によると「ステレオインジケータが不安定」「音が途切れる」などの現象が出るとのことです。
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FM 同調点電圧を測定すると 600mV あり限界を超えています。
正常であれば、この電圧は 0V です。
これが原因です。
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修理
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右の写真で赤〇で囲んだ FM 同調点検出用の [IFT251] を再調整して直りました。
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修理後の動作チェック
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修理後半日 FM 受信して [STEREO] 表示が安定して点灯し、音も途切れることがないことを確認しました。
リペア (その2):FM で感度落ちしている
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原因
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FM フロントエンドにあるトリマコンデンサ [CT101] [CT102] [CT103] の全数が劣化したためです。
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[トリマコンデンサ] はハトメ構造になっており、経年変化でハトメ部分が接触不良になって容量抜けします。
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こうなると FM の感度が低下します。
少しずつ徐々に不良になっていくので気付くのが遅れます。
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ST-S333ES シリーズでは [トリマコンデンサ] の故障が散見されます。
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修理
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[トリマコンデンサ] ×3個を一斉交換しました。
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左の写真で黄〇で囲んだ部品が交換後です。
10pF セラミックトリマコンデンサを使いました。
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右の写真は交換前に基板に実装されていたトリマコンデンサです。

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修理後の動作チェック
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交換後の再調整で大きく感度が上がり、(当方の環境では) S メータがフルになりました。
直りました!
リペア (その3):[電気二重層コンデンサ] [タンタルコンデンサ] 交換
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概要
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本機が到着した時点でプリセットは全て消えて初期化されていました。
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10年前に修理依頼者で [電気二重層コンデンサ] を交換していますが、ハンダがリードに回り込んでいませんでした。
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この際、[電気二重層コンデンサ] を交換しましょう。
ついでに [タンタルコンデンサ] も予防交換します。
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[タンタルコンデンサ] は短絡事故が多く、別の種類のコンデンサに交換すると幸せになります。
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使われていたタンタルコンデンサの耐圧が 6.3V しかありません。
ここには 6V 近くの電圧がかかります。
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タンタルコンデンサは耐圧を超えた電圧がかかると簡単に内部短絡します。
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半世紀前に [人気者] だったタンタルコンデンサは、現在では短絡事故が多いことから [嫌われ者] になっています。
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換装する積層セラミックコンデンサはタンタルより ESR が低く高性能でやや高価な無極性コンデンサです。
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修理 (予防交換)
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交換リスト
| 部品番号 |
交換前 |
交換後 |
備考 |
| C604 |
10uF/6.3V (タンタル) |
10uF/25V (積層セラミック) |
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| C605 |
0.22F/5.5V (修理依頼者が交換) |
1F/5.5V |
電気二重層コンデンサ |
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左の写真は交換後です。
大きな黄〇が [C605]、残る1つが [C604] です。
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右の写真は交換前に基板に実装されていた [C605] [C604] です。

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修理後の動作チェック
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正常にプリセットやコールができることを確認しました。
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コメント
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電気二重層コンデンサはオリジンルの 0.1F → 1F と10倍の容量になったので、10倍の10ヶ月メモリ保持できるかも?
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実際には自己放電もあるので数ヶ月でしょう。
リペア (その4):ハンダクラックの補修
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ハンダクラックしやすい箇所
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リアパネルの端子類
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これらのハンダ付け部には [リアパネル] [基板] の2方向から常にストレスがかかるのでハンダクラックしやすいです。
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アースバー
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基板に細長い銅板が走っていますが、これがアースバーです。
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アースバーは基板にハンダ付けされていますが、銅板と基板の熱膨張率が違うのでハンダクラックしやすいです。
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修理
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[FM ANTENNA (A/B)] [AM ANTENNA] [OUTPUT] 端子のリードのハンダ付け部分を補修ハンダ付けしました。
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左の写真はこれらの端子のリードを裏側から眺めたものですが、長~いリードで、いかにもハンダクラックに弱そうです。
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[FM ANTENNA] 端子が A/B ともハンダクラックしていました。
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右の写真の [アースバー]×8本 全てのハンダ付け部分を補修ハンダ付けしました。

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修理後の動作チェック
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動作中に端子類を揺すったり、基板をハンマリングしても異常が発生しないことを確認しました。
リペア (その5):その他
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筐体内と基板に綿ボコリが堆積している
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強力電動エアブロアと刷毛を使って綿ボコリを吹き飛ばし、綺麗になりました。
再調整
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電源電圧チェック (VP)
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実測値は以下のように良好でした。
| VP (ジャンパー) |
表示電圧 |
標準電圧 |
実測電圧 |
判定 |
備考 (用途) |
| JW88 |
+30V |
+30.9V |
+30.1V |
〇 |
PLL (同調) |
| JW89 |
+15V |
+16.3V |
+14.9V |
〇 |
AUDIO SYSTEM |
| JW145 |
-17V |
-17.5V |
-17.6V |
〇 |
FL 管 |
| JW213 |
+13V |
+13.6V |
+13.0V |
〇 |
DIGITAL SYSTEM |
| JW220 |
+5V |
+5.6V |
+5.68V |
〇 |
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FM/AM 受信部の調整
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調整結果
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FM 受信
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再調整で周波数ズレは直り、感度が大きく上がりました。
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スレレオセパレーションや高調波歪率などは以下のように優秀な性能が出ました。
| 項目 |
IF BAND |
stereo/mono |
L |
R |
単位 |
| ステレオセパレーション (1kHz) |
WIDE |
stereo |
61 |
69 |
dB |
| NARROW |
59 |
51 |
dB |
| 高調波歪率 (1kHz) |
WIDE |
mono |
0.024 |
% |
| stereo |
0.031 |
% |
| NARROW |
mono |
0.26 |
% |
| stereo |
0.26 |
% |
| パイロット信号キャリアリーク |
WIDE |
stereo |
-74 |
-74 |
dB |
| オーディオ出力レベル偏差 (1kHz) |
WIDE |
mono |
0 |
+0.01 |
dB |
| CAL TONE 信号 |
WIDE |
mono |
422 |
Hz |
| -5.9 |
dB |
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AM 受信
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[純正 AM ループアンテナ] の添付がなかったので、IF 調整だけしました。
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関東では2024年に AM stereo 放送が終わったので、この放送を聴いてのチェックはしていません。
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NHK AM 第2放送は2026年3月31日に終了しました。
2028年に AM 放送が終了します。
使ってみました
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修理&再調整が終わって
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今回も ST-S333ES シリーズで劣化・故障しやすい定番の箇所が全て不具合になっていました。
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本来の素晴らしい性能に蘇って素晴らしく良い音になりました。
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ST-S333ESJ はアンテナ端子が2つあるので、
ワイド FM 対応クリコン
を使ってのワイド FM 受信に便利です。
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全体的にシャンパンゴールド調のデザイン
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SONY デザインそのものです。
恰好イイです。
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フロントパネルはアルミ材で、ヘアライン仕上げです。
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FM 受信
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感度も S/N も一級品です。
微弱電波もしっかり捉えます。
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解像度がある素晴らしい音。
現代の安物チューナーとは全く異次元の音です。
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AM 受信
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感度は良いです。
ループアンテナでしっかり入感します。