SONY ST-S333ESJ (8号機) が到着
2024年4月21日、大阪府八尾市の I さんより
SONY ST-S333ESJ
の修理依頼品が到着しました。
程度&動作チェック
-
修理依頼者のコメント
-
調子が悪いです。
修理と[電気二重層コンデンサ] [タンタルコンデンサ] の交換をお願いします。
-
外観
-
製造シリアル番号は [201140] で、電源コードの製造マーキングより [1994年製造品] とわかりました。
-
[純正 AM ループアンテナ] が添付されていました。
-
右サイドウッドの最奥最下の化粧ツキ板がほんの少し剥がれています。
-
清掃すれば綺麗になりそうな汚れが結構ありますが、致命的なキズなどはなく、良い状態のほうです。
-
電源 ON してチェック
-
問題なく電源が入り、FL の輝度は新品同様、各ボタン操作も正常です。
-
FM 受信
-
-0.2MHz の周波数ズレがあります。
80MHz の放送が 79.8MHz で受信します。
ズレた周波数で [STEREO] 表示が出ます。
-
S メータの振れが少なく、感度落ちしているようです。
-
AM 受信
-
添付された [純正 AM ループアンテナ] を接続してチェックし、問題なく良好に受信できました。
-
カバーを開けてチェック
-
基板には全体的に薄っすらとスス状のホコリがあります。
目視でわかる劣化部品は見当たりません。
リペア (その1):FM で -0.2MHz 周波数ズレしている
-
原因
-
修理
-
[IFT251] を再調整して直りました。
オートチューニングしても正しい放送周波数で停止するようになりました。
リペア (その2):FM で感度落ちしている
-
原因
-
FM フロントエンドにあるトリマコンデンサ×3個 (全数) が劣化したためです。
-
[トリマコンデンサ] はハトメ構造になっており、経年変化でハトメ部分が接触不良になって容量抜けします。
-
こうなると FM の感度が低下します。
少しずつ徐々に不良になっていくので気付くのが遅れます。
-
ST-S333ES シリーズでは [トリマコンデンサ] の故障が散見されます。
-
修理
-
[トリマコンデンサ] ×3個を一斉交換しました。
-
左の写真で黄〇で囲んだ部品が交換後です。
10pF セラミックトリマコンデンサを使いました。
-
右の写真は交換前に基板に実装されていたトリマコンデンサです。

-
交換後の再調整で大きく感度が上がり、直りました!
リペア (その3):[電気二重層コンデンサ] [タンタルコンデンサ] 予防交換 ・・・ 修理依頼者の要求
-
概要
-
[電気二重層コンデンサ] を交換しますが、ついでに [タンタルコンデンサ] も予防交換します。
-
[タンタルコンデンサ] は短絡事故が多く、別の種類のコンデンサに交換すると幸せになります。
-
使われていたタンタルコンデンサの耐圧が 6.3V しかありません。
ここには 6V 近くの電圧がかかります。
-
タンタルコンデンサは耐圧を超えた電圧がかかると簡単に内部短絡します。
-
半世紀前に [人気者] だったタンタルコンデンサは、現在では短絡事故が多いことから [嫌われ者] になっています。
-
換装する積層セラミックコンデンサはタンタルより ESR が低く高性能でやや高価な無極性コンデンサです。
-
修理 (予防交換)
-
交換リスト
| 部品番号 |
交換前 |
交換後 |
備考 |
| C604 |
10uF/6.3V (タンタル) |
10uF/25V (積層セラミック) |
|
| C605 |
0.1F/5.5V |
1F/5.5V |
電気二重層コンデンサ |
-
左の写真は交換後です。
大きな黄〇が [C605]、残る1つが [C604] です。
-
右の写真は交換前に基板に実装されていた [C605] [C604] です。

-
電気二重層コンデンサは 0.1F → 1F と10倍の容量になったので、10倍の10ヶ月メモリ保持できるかも?
リペア (その4):ハンダクラックの観察と補修
-
ハンダクラックの観察
-
[OUTPUT] [FM ANTENNA]×2 端子がハンダクラックしていました。
-
リアパネルにある端子のリードは基板に直接ハンダ付けされています。
-
このハンダ付け部分には [リアパネル] [基板] の2方向から常にストレスを受けるのでハンダクラックしやすいです。
-
基板に細長い銅板が走っていますが、これがアースバーです。
あちこちハンダクラックしていました。
-
修理 (ハンダクラック補修)
-
[FM ANTENNA (A/B)] [AM ANTENNA] [OUTPUT] 端子のリードのハンダ付け部分を補修ハンダ付けしました。
-
左の写真はこれらの端子のリードを裏側から眺めたものですが、長~いリードで、いかにもハンダクラックに弱そうです。
-
右の写真の [アースバー]×8本 全てのハンダ付け部分を補修ハンダ付けしました。

再調整
-
電源電圧チェック (VP)
-
実測値は以下のように良好でした。
| VP (ジャンパー) |
表示電圧 |
標準電圧 |
実測電圧 |
判定 |
備考 (用途) |
| JW88 |
+30V |
+30.9V |
+30.0V |
〇 |
PLL (同調) |
| JW89 |
+15V |
+16.3V |
+14.6V |
〇 |
AUDIO SYSTEM |
| JW145 |
-17V |
-17.5V |
-17.7V |
〇 |
FL 管 |
| JW213 |
+13V |
+13.6V |
+13.1V |
〇 |
DIGITAL SYSTEM |
| JW220 |
+5V |
+5.6V |
+5.59V |
〇 |
-
FM/AM 受信部の調整
-
調整結果
-
FM 受信
-
再調整で周波数ズレは直り、感度が大きく上がりました。
-
この機種にしてはやや高調波歪率が大きいですが、問題はありません。
-
スレレオセパレーションなどは以下のように優秀な性能が出ました。
| 項目 |
IF BAND |
stereo/mono |
L |
R |
単位 |
| ステレオセパレーション (1kHz) |
WIDE |
stereo |
60 |
68 |
dB |
| NARROW |
37 |
37 |
dB |
| 高調波歪率 (1kHz) |
WIDE |
mono |
0.13 |
% |
| stereo |
0.13 |
% |
| NARROW |
mono |
0.17 |
% |
| stereo |
0.17 |
% |
| パイロット信号キャリアリーク |
WIDE |
stereo |
-75 |
-75 |
dB |
| オーディオ出力レベル偏差 |
WIDE |
mono |
0 |
+0.01 |
dB |
| CAL TONE 信号 |
WIDE |
mono |
398.4 |
Hz |
| -5.7 |
dB |
-
AM 受信
-
添付された [純正 AM ループアンテナ] で最高感度になるよう調整しました。
使ってみました
-
修理&再調整が終わって
-
周波数ズレが最大の故障でした。
この個体はあちこちハンダクラックしていましたが、全て直りました。
-
本来の素晴らしい性能に蘇って素晴らしく良い音になりました。
-
手持ちの [RM-J301] 専用リモコンでの操作も良好でした。
-
ワイド FM 対応クリコン
でのワイド FM 受信も良好でした。
-
ST-S333ESJ はアンテナ端子が2つあるので、ワイド FM 受信に便利です。
-
全体的にブラック基調のデザイン
-
SONY デザインそのものです。
恰好イイです。
-
フロントパネルはアルミ材で、ヘアライン仕上げです。
-
左右のサイドウッドが高級感を醸し出しています。
-
FM 受信
-
感度も S/N も一級品です。
微弱電波もしっかり捉えます。
-
解像度がある素晴らしい音。
現代の安物チューナーとは全く異次元の音です。
-
AM 受信
-
感度は良いです。
ループアンテナでしっかり入感します。