SONY ST-SA5ES (17号機) が到着
2026年4月12日、島根県益田市の S さんより
SONY ST-SA5ES
の修理依頼品が到着しました。
程度&動作チェック
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修理依頼者のコメント
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S メーターの振れが小さく、時々 0.1MHz ほど同調周波数がズレます。
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2024年8月にヤフオクで「調整済みの完動品」ということで入手しました。
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出品者で以下のメンテナンスを行っているとのことでした。
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筐体内外分解クリーニング、基板クリーニング、クラック防止再ハンダ
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部品交換 (タンタルコンデンサ、メモリバックアップキャパシタ、アンテナ切換リレー)
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各部電圧測定、受信部再調整、消費電力測定
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音声出力レベル (キャリブレ含む)、歪率、ステレオセパレーション測定
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外観のチェック
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製造シリアル番号は [253988] で、電源コードの製造マーキングより [1996年製造品] とわかりました。
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[純正 AM ループアンテナ] [リモコン] は添付されていませんでした。
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特に指摘するような外観上の問題はなく、かなり綺麗な逸品です。
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電源 ON してチェック
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電源は入り、ディスプレイの輝度は新品同様です。
操作ボタンなどは正常で、[CAL TONE] ボタンでテスト音が出ます。
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FM 受信
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S メータの振れは 70% ほどで、感度落ちしています。
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以下の現象があることより、FM 同調点が -0.1MHz 限界にズレています。
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放送局の正しい周波数と -0.1MHz 離れた周波数で [STEREO] 表示が出ます。
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+0.1MHz 離れた周波数では [STEREO] 表示が出ません。
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放送局の正しい周波数していると、[STEREO] 表示が点滅して音が途切れることがあります。
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AM 受信
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手持ちの [ST-SA5ES 純正 AM ループアンテナ] を接続してチェックしました。
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感度良く、良好受信できました。
問題ありません。
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カバーを開けてチェック
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あれれっ、誰がやったのかわかりませんが、
[CNP705] コネクタへのプラグ挿入が間違っています!
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左の写真のように挿入されているのでプラグの信号が左右反転しています。
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かなりまずい状態なので、すぐに右の写真のように挿入し直しました。
全然違うでしょ。
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回路図で確認すると [PROGRAM] スイッチに接続されるケーブルでした。
おそらく PROGRAM 機能を使わなったので気が付かなかったのでしょう。

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上記の他は、基板は綺麗で目視で明らかに劣化とわかる部品は見当たりません。
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[タンタルコンデンサ] → [積層セラミックコンデンサ] に交換済みでした。
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メモリバックアップキャパシタ (電気二重層コンデンサ) は 1F/5.5V に交換済みでした。
リペア (その1):FM 受信で 0.1MHz 周波数ズレ
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概要
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2年前のメンテナンスで再調整されているのに周波数ズレとは、かなり早過ぎる経年変化です。
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要因は「保管時の周囲環境が悪かった(高音・多湿)」「同調点検出 IFT の劣化」です。
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今回は後者が原因と考えて修理します。
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修理
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同調点検出用 [IFT251] 内蔵のチタコンが劣化して容量抜けしていると想定して修理します。
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左の写真の黄〇で囲んだ部品が [IFT251] です。
右の写真は基板から取り出した [IFT251] です。

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左の写真は [IFT251] の裏側です。
チクワの形をしたチタコンが真っ黒になっています。
これが劣化です。
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もうこのチタコンは使えないので、取り外してから [IFT251] を基板に戻しました。
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チタコンの代わりに 30ppm/℃ 温度補償 NP0 積層セラミックコンデンサ 100pF を基板の裏側に取り付けました。
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左の写真で青色の部品が積層セラミックコンデンサです。

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修理後の動作チェック
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AUTO TUNING すると放送局の正しい周波数でスキャンを停止し、放送を受信できました。
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筆者のところで受信できる全ての放送で [STEREO] 表示が安定に出ることを確認しました。
リペア (その2):FM で感度落ちしている
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原因
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FM フロントエンドの RF トリマコンデンサの劣化が感度落ちの原因です。
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2年前のメンテナンスでは、このトリマコンデンサは交換されていません。
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修理
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[トリマコンデンサ] ×3個を一斉交換しました。
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左の写真は交換後で、赤〇で囲んだ部品がトリマコンデンサです。
10pF セラミックトリマコンデンサにしました。
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右の写真はこれまで基板に実装されていた故障したトリマコンデンサです。
底部にあるハトメ部分がサビて接触不良になるのです。

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修理後の動作チェック
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交換したトリマコンデンサを再調整して (筆者の環境では) S メータがフルに振れるようになりました。
リペア (その3):ハンダクラックの補修
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概要
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2年前のメンテナンスではハンダクラックの補修が実施されたことになっています。
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ところが基板の裏側を観察してもハンダクラック補修の形跡が見当たらないのです。
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全然やられていないか、ごく一部分しか補修しなかったのでしょう。
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RCA 端子と AM アンテナ端子はハンダクラックしていました。
2年前に補修したのならあり得ない不具合です。
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以上より、全面的にハンダクラックの補修をすることにしました。
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ST-SA5ES でハンダクラックしやすい箇所
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左の写真は [OUTPUT] [FM/AM アンテナ] 端子の裏側です。
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リードが基板に直接ハンダ付けされています。
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ハンダ付け部にはリアパネルと基板の2方向から常にストレスがかかっており、ハンダクラックしやすいです。
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右の写真に写っている長い銅板はアースバーです。
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ここも基板と銅板の熱膨張率が違うのでハンダクラックしやすいです。
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アースバーは電源&GND ラインに使っているので振動で電源が切れたり、GND が浮いたりします。
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最悪、ダイオードや IC などが故障します。

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修理
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[OUTPUT] [FM ANTENNA (A/B)] [AM ANTENNA] 端子
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[OUTPUT] 端子 (RCA 端子) と [AM ANTENNA] 端子でハンダクラックしていました。
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これらの端子のリードのハンダ付け部分を補修ハンダ付けしました。
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アースバー
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数十箇所あるハンダ付け部分を全部補修ハンダ付けしました。
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修理後の動作チェック
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リアパネルにある端子類を揺すっても異常が発生しないことを確認しました。
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基板をハンマリングテストしても異常が発生しないことを確認しました。
再調整
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電圧チェック (VP)
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電源回路を修理したので、実測値は以下のように良好でした。
| VP |
表示電圧 |
実測電圧 |
判定 |
備考 |
| JW88 |
+30V |
+30.8V |
〇 |
PLL |
| JW89 |
+15V |
+15.1V |
〇 |
AUDIO |
| JW145 |
-17V |
-17.9V |
〇 |
FL |
| JW213 |
+13V |
+13.1V |
〇 |
DIGITAL |
| JW220 |
+5V |
+5.64V |
〇 |
DIGITAL |
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FM/AM 受信部の調整
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再調整結果
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FM 受信部
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フロントエンドのトリマコンデンサを全数交換したので、トラッキング調整をやり直しました。
感度が大きく上がりました。
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2年前のメンテナンスで再調整されているのに PLL 検波の調整が大きくズレていました。
調整していないが真実でしょう。
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WOIS (IF 歪補正) が普通ではない状態に調整されていました。
正規の調整にしました。
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ステレオセパレーションと高調波歪率は大きく改善し、解像度の高い音になりました。
| 項目 |
IF BAND |
stero/mono |
L |
R |
単位 |
| ステレオセパレーション (1kHz) |
WIDE |
stereo |
60 |
67 |
dB |
| NARROW |
43 |
40 |
dB |
| 高調波歪率 (1kHz) |
WIDE |
mono |
0.0091 |
% |
| stereo |
0.036 |
% |
| NARROW |
mono |
0.20 |
% |
| stereo |
0.20 |
% |
| パイロット信号キャリアリーク |
WIDE |
stereo |
-75 |
-75 |
dB |
| オーディオ出力レベル偏差 (1kHz) |
WIDE |
mono |
0 |
0 |
dB |
| CAL TONE |
WIDE |
mono |
422 |
Hz |
| -5.6 |
dB |
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AM 受信部
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手持ちの [ST-SA5ES 純正 AM ループアンテナ] で最高性能になるよう調整しました。
使ってみました
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修理&再調整が終わって
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2年前にメンテナンスしているということで楽勝と思っていました。
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でも、そのメンテナンスが完全ではなかったので、普通の修理とそう変わらない手間がかかりました。
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感度低下は2年前に部品交換されていないトリマコンデンサの劣化でした。
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修理と再調整により、本来の素晴らしい性能が蘇りました。
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ワイド FM 対応クリコン
を製作すればワイド FM 受信ができます。
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ST-SA5ES はアンテナ端子が2つあり、放送局で表示する機能があるので、ワイド FM 受信に便利です。
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2026年3月31日に NHK AM 第2放送は消滅しました。
更に
AM 放送は2028年にほぼ消滅
するので今から準備するのが吉です。
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デザイン
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素晴らしい精悍なデザインで高級感あります。
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サイドウッドの代わりにアルミ製のサイドパネルがあって、これがイイです。
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(C リングパネルがないので) 直接的で軽快なボタン操作ができます。
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感度と音質
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FM の感度は抜群に良く、S/N が良いです。
細かい音がよく聴けます。
艶っぽい音がします。
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AM の感度も抜群に良く、S/N も良いです。
AM としては音質も良く、放送を楽しめます。