Pioneer TX-8800Ⅱ (3号機) が到着
2025年3月25日、東京都練馬区の S さんより
Pioneer TX-8800Ⅱ
の修理依頼品が到着しました。
S さんの自家配送でした。
この時は新規の修理受付を休止していたのですが、お買い上げいただいた
YAMAHA T-2 (10号機)
をわざわざ車で引き取りに来られたし、一緒に持ってこられた本機の修理を断る訳にもいかず、特別に修理&再調整を引き受けました。
程度&動作チェック
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修理依頼者のコメント
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ハードオフ
吉祥寺店で昔使っていた本機を見つけ、中古ジャンク品でしたが、懐かしく思って購入してしまいました。
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電源 ON すると [T メータ] の指針が左側のほうで大きくフラフラ動いたままで使えませんでした。
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[POWER] スイッチのレバーを誤って曲げてしまいました。
購入時は曲がっていませんでした。
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多少費用がかかってもよいので何とか直してほしいです。
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外観
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製造シルアル番号は [WG1029452] で、電源コードの製造マーキングより [1976年製造品] とわかりました。
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全体にすごく綺麗です。
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フロントパネルは綺麗です。
全くの無傷ということではなく、僅かなキズやスレ程度はありますが目立ちません。
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リアパネルや天板も綺麗で RCA 端子にも輝きが残っています。
この状態で千円だったら筆者もほしいくらいです。
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この綺麗ということが実は復活できるかどうかの決め手なのです。
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綺麗ということは大切に使われてきた証拠です。
こういう個体の故障は限定的であり、直る可能性が高いです。
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[POWER] スイッチのレバーが左に曲がっています。
1,100円の値札に笑ってしまいます。

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電源 ON して動作チェック
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[ダイヤル照明] [POWER] [NARROW] ランプは点灯します。
[WIDE] ランプは切れています。
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[STEREO] ランプは点灯する条件の1つの [T メータ] がセンタにならないので、この時点では不明です。
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チューニングノブ、ツマミ、レバーは正常に反応します。
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FM 受信
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[S メータ] は正常に振れますが、同調に関係なく [T メータ] は左側で常にフラフラ動いており故障しています。
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[T メータ] が NG なので [S メータ] を頼りに受信すると、-0.2MHz 程度の周波数ズレがあります。
89.7MHz の放送が 89.5MHz で受信。
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[MUTING] スイッチを OFF にするとモノラル音が出ました。
出てくる音はマトモそうです。
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[REC LEVEL CHECK] スイッチ ON で正常にテスト音が出ます。
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AM 受信
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カバーを開けてチェック
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綺麗な状態です。
目視で劣化とわかる部品は見当たりません。
リペア (その1):[POWER] スイッチのレバーが左に曲がっている
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概要
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レバーが曲がったのは修理依頼者の不注意によります。
レバーにヒビが入っていなかったので、たぶん直ると思います。
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修理
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スイッチトップを外し、大きなペンチを使ってレバーの曲がりを修正しました。
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結果、レバーが曲がっていたとわからない状態に戻せました。
よかった!!!
リペア (その2):FM 受信時に同調に関係なく [T メータ] の針が左側で常にフラフラ動いている
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調査
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下の回路図はクォードラチュア検波の部分で、[Q5] PA3001 で [検波] [S メータ抽出] [T メータ抽出] を行います。
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[T メータ] 電圧は [Q5] の 7~10pin 間に現れます。
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同調すると 7~10pin 間電圧=0V になります。
[T メータ] はこの電圧で振れています。
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GND からの電圧を測定すると、7pin, 10pin とも 3~5V 程度でフラフラしています。
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正常ならどちらも 7V 程度になるはずです。
こうなると [Q5] [Q8] いずれかの故障です。
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[Q8] の故障を
TX-8800Ⅱ (2号機)
で経験していたので、まずは [Q8] を取り外してみました。
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結果、当たり!でした。
[T メータ] はフラフラしなくなり、同調時に正しくセンタになりました。
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[Q8] は FET で、これが無くてもチューナとしてはちゃんと動作します。
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[Q8] は [T メータ] が必要ない時 (AM とか離調時) に強制的にセンタに戻すだけの役割です。
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[Q8] が故障して [Q5] の 7pin, 10pin の電圧を引っ張っていたのです。
これが原因!!!
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入手困難で、入手できても高価な IC の [Q5] PA3001 でなくてよかったです。

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正式対策
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以下の表は正式対策の部品交換リストです。
| 部品番号 |
交換前 |
交換後 |
備考 |
| Q8 |
2SK30A |
BF256B |
FET |
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右の写真は部品交換後で、黄〇で囲んだのが [Q8 (FET)] です。
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修理後の動作チェック
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同調ノブの動きに同期して正しく [T メータ] が振れるようになりました。
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ここで新たな不具合が見つかりました。
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正しく同調しても [STEREO] ランプが点灯しないのです。
リペア (その3):FM 受信時に正しく同調しても [STEREO] ランプが点灯しない
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調査
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この不具合は、これまでは [T メータ] 動作異常でわからなかったのです。
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原因は [STEREO ランプが切れている] [経年変化で MPX の VCO が調整ズレした] のどちらかです。
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[FUNCTION] スイッチで [FM AUTO] [FM MONO] を切り換えてみましたが、どちらもステレオ感がありません。
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こうなると [VCO の調整ズレ] が原因です。
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修理
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MPX の VCO 調整用 [VR4] を仮調整したら [STEREO] ランプが点灯し、音にもステレオ感が出ました。
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これで直りましたが仮調整です。
正式には [FM 受信部の調整] のところで正式調整します。
リペア (その4):[WIDE] ランプが切れている
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概要
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修理
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適合するのは [6V/30mA フィラメント麦球] です。
手持ちの同じスペックの麦球と交換して直りました。
再調整
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電圧チェック (VP)
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実測値は以下のように良好でした。
| 基板 |
VP |
標準値 |
実測値 |
| 電源基板 |
2番端子 |
+13V |
+13.6V |
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FM/AM 受信部の調整
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調整結果
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FM 受信
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-0.2MHz の周波数ズレがありましたが、トラッキング調整で ±0.1MHz の誤差にできました。
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バリコンや糸掛けというアナログ機構なので完全に誤差ゼロにすることは無理です。
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フロントエンドのトラッキング調整ズレと同調点ズレがありましたが、再調整で規定内に入りました。
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ステレオセパレーションが落ちていましたが、再調整でスペックを上回る数値に調整でき、音の解像度が上がりました。
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再調整後の性能値は以下となりました。
良好な数値です。
| 項目 |
IF BAND |
stereo/mono |
L |
R |
単位 |
| ステレオセパレーション (1kHz) |
WIDE |
stereo |
51 |
52 |
dB |
| NARROW |
47 |
49 |
dB |
| 高調波歪率 (1kHz) |
WIDE |
mono |
0.078 |
% |
| stereo |
0.078 |
% |
| NARROW |
mono |
0.18 |
% |
| stereo |
0.18 |
% |
| パイロット信号キャリアリーク |
WIDE |
stereo |
-70 |
-70 |
dB |
| オーディオ出力レベル偏差 (1kHz) |
WIDE |
mono |
0 |
+0.06 |
dB |
| REC LEVEL CHECK 信号 |
WIDE |
mono |
421.9 |
Hz |
| -6.0 |
dB |
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AM 受信
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元々問題がなかったのですが、再調整で少しだけ感度が上がりました。
使ってみました
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修理&再調整が終わって
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不具合は全部直りました。
もう価値が千円ではありません。
定価の性能にまで蘇りました。
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修理依頼者はこのような状態の良い個体を激安で射とめられてラッキーでした。
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デザイン
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フロントパネルのヘアラインアルミは厚く、文字は墨入れを施した彫刻で豪華です。
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ダイヤルスケールの透明板はガラスです。
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ダイヤルスケールの下側の飾りサッシがデザインのアクセントになっています。
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チューニングノブは無垢アルミで、適度な重みがありスムーズに回転します。
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ダイヤル指針やダイヤルスケールが腕時計の文字盤ような仕上げでキンキラです。
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ドッシリとして重厚な安定感がありますが、アンプ並みの大きさと重さです。
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性能・音質
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FM 受信で十分な性能があります。
音質はソフトな感じがしますが良い音です。
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AM 受信の性能は普通で音は良いほうです。
AM 放送は2028年で終了
するので今のうちに使ってください。